高江雅人  竹工芸職人の独り言  竹工房オンセ

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青竹箸  3

2008年11月15日 07時56分01秒 | 青竹箸

151正月用の青竹箸で結構な注文をいただいたので、「これは行ける!」と感触を掴んだ。「この部門を育てていけば、大きな市場に成るのでは?」と考えた。そこで最初に浮かんだのが、結婚式の門出の席に青竹箸でお祝い出来たら嬉しいのでは?と考えた。これだったら、事前に注文数も判るし、まとまった数の注文になる。

考え始めたら、どんどんスケールが広がって行く。頭の中では、もう結婚式場と契約できた様な気になっているのだ。卸し価格で作ったにしても、一つの結婚式場で最低一日2組だとしても、一組100人×30日、人口10万人に付き1軒の結婚式場としか契約すると、計算していくと……。全国規模で計算していくと単純計算で、お箸だけでも年商何十億と言う事になる。

クーラーボックスに、青竹箸を入れて結婚式場や料亭を営業して回った。しかし、現実は甘くない!1週間も営業して、全然注文が取れない。一番の原因は、「1膳数円で使っている箸にそんなにも出せない。」私の中では、「こんな素晴しい物で結婚式を演出できたら、お金の問題じゃ無いでしょう!」と思い込んでいるのだが、現実は冷たかった。その他、「管理が難しい」とか、「もし、お箸で食中毒でもおこしたら?」など、生ものであることへの不安が大きかった。

51 営業と同時に生産体制も見直さなければならなかった。全国的な展開をする事を前提に考えると、とても、手作りでは無理なので、ある程度機械化を計らなければならない。手始めに、機械にかける前の段階の、巾と厚みが揃った箸の元材料を作る為の機械を作った。ある程度に割った竹をトコロテンを押し出すような形で、箸1本分の角棒の様な形にする機械だ。単純な機械だったが、30万円くらいかかった。しかし、いざ本番で青竹を機械に通してみると、押える圧力で青竹の表面に微妙な変色が出てきたり、押える圧力を少なくすると、断面が真四角でなく、平行四辺形になってしまったり、などなど難問だらけであった。

結局、この「青竹プロジェクト」は最初の生産と販売両方で上手く行かず、30万円の失敗だけで済んだ。トホホ。    後から聞いた話では、お箸の専門メーカーが国の補助金を使って、青竹箸を削る機械を作ったそうだが、1000万円くらい掛かったそうだが、未だに製品になったと聞かないので、どうなった事やら?

しかし、この事から得る事も沢山あった。前向きに企画すること、現実の飛び込み営業の体験、量産することの難しさ、何より、自分の企画が上手くいくか?いかないか?という経営の面白さだ。  また、今も懲りずに、来シーズンに向けて新しい作品への試行錯誤をしているのだ。

竹工房オンセ

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2 コメント

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ちつとた様 (ティディベアー)
2011-01-17 09:05:20
ちつとた様
書き込みありがとうございます。
天然素材の面白さと云いますか?なかなか、思い通りに為ってくれない素材の一つでもありますね。
このお箸を削る事だけでなく、ヒゴを取るにも、編みこむにしても、1本1本、竹の性質の違いを感じさせられます。でも、その分、奥が深くて面白いのですよね。
「ちつとた」と「た行」だけのお名前にも、きっと面白い由来があるのでしょうか?
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私も、木を ■ に切ったつもりが、平行四辺形だった... (ちつとた)
2011-01-16 14:00:43
私も、木を ■ に切ったつもりが、平行四辺形だったり、うねったりです。
天然ものは時間がたつと、乾燥してひずんだり、ひびが入ったり、やっかいですね。
そこが生ものの味わいでもあります。
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