180話）農村の小鉄鉱山

　実験林場「カササギの森」とその周囲には鉄鉱石が眠っています。ちょっと上流で開発がはじまり、水がにごったり、大型ダンプが通ったりで、環境が悪化しました。この春には油断しているすきに、私たちの敷地が無断で重機で掘り返されました。カウンターパートの大同市総工会をつうじて大同県政府に強く要請し、なんとかそれはストップしました。
　いまの問題は農民によるゲリラです。敷地内の谷の底には砂利がたまっていますが、それを家族で農用トレーラーに積み、運び出していきます。すこし下手で、その砂利のなかから砂鉄を取り出します（写真）。使うのは、永久磁石の回転式ドラムをすえた簡単な機械で、1日で200元になるといいますから、農民にとっては、けっこうな収入。小鉱山ですね。
　それによって植生が荒らされるので、私たちとしては困るんですけど、取り締まろうとすれば、たいへん人手が必要になり、やり切れるものではありません。
　なかには農用トレーラーでローラー式の磁石を牽引し、道路の表面にある砂鉄を集めている人もいます。集まるのはわずかな量でしょうけど、どこかにいくついでに、そうやって集めます。それをみて私は、あの日本のベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか？』を思い浮かべましたよ。
　霊丘自然植物園にも鉄鉱石があります。この地方のいたるところにあります。それが不幸のタネで、もし資源がなかったら、ここまで大地が痛めつけられることはないでしょうに。