158)私の通訳さん

 私の中国語が一向に上達しないのをみて、中国側が通訳候補を連れてきました。13年前の春のことです。王萍(ワンピン)という看護士で、埼玉医科大学で一年間研修した経験がありました。でもそれは5年も前のこと、日本語はほとんど忘れていて、通訳なんてできるかなというのが私の第一印象でした。
 ところが彼女は頑張り屋なんですね。加藤純子さんという退職教員が大同に日本語を教えにきたという幸運もありました。たちまち上達し、日本の植物の専門家たちも彼女の通訳がいちばん安心できるというまでになりました。
 困るのは、彼女はケンカの通訳には役立たないことです。私がかんかんに怒っていても、彼女はそれを笑顔で通訳します。「あんたは怒ったことがないの?」と私がきくと、「ありますよ、2回も」と答えます。40数年の生涯でたった2回とは!
 王萍さんはやがて看護士長になりました。それから数年して院長助理になり、昨年からは副院長です。小さな個人病院ではないんですよ、大同市第4人民医院という職員数450人の大病院です。看護士で入った人が副院長になるなんて、日本で考えられますか。問題も多いけど、中国にはこういう側面もあります。
 でも彼女の話では、女性の副院長は大同市で2番目。看護士から副院長になった人は彼女が最初だそう。やっぱりただものじゃありません。もう1つ困るのは彼女が忙しくなりすぎたことです。
 【写真】ボランティア通訳の王萍さん。勤務先の病院の前で。
 (2008年2月15日号)
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