竹とんぼ

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歳月や銀河賑はひ始めたり  衣川次郎

2018-08-09 | 今日の季語



歳月や銀河賑はひ始めたり  衣川次郎

 今や日本の夜には光が溢れている。
夜の地球を撮った衛星写真では、
ネオンの明りで日本列島の輪郭がくっきりと浮かび上がる。
夜が明るくなるにつれ、
銀河もすっかり見えなくなった。
防犯や経済のために、日本人は尊い自然を犠牲にしたのだ。
作者はそんな日本の姿を見つめ続けてきたのだろう。
日進月歩で都市化する日本。
それにつれて淡くなる銀河。
とうとう銀河の姿も完全に失われてしまったかと思われた時、
改めて頭上を見上げて息を飲んだ。
そこには、かつてのようにまばゆい銀河が、
昔と変わらない姿で広がっていたのである
しかし、実は作者は知っていた。
それが本当の銀河の姿ではないことを。
歳月は作者自身の体を老化させた。
昔ははっきりと見えた目も、
今ではうっすらと霞掛かって来た。
月を見れば、月が二重に見える。
当然、夜空に浮かぶ星の数も、全て二重に見えているはずだ。
作者は今、実際の銀河を眺めながら、
実際よりもまぶしい銀河を見ている。
しかし作者は悲しんではいない。むしろ感謝している。
歳月が、我が身の老化と引き換えに、
誰にも見ることのできない、
荘厳な自然の姿を作者の目に映さしめたからだ。

参照 https://kakuyomu.jp/ 矢口晃

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