竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

傷痕も閉じ込めたまま香水瓶 たけし

2018-05-06 | 
傷痕も閉じ込めたまま香水瓶




旧い香水瓶がドレッサーの抽斗の奥にある

香水を強めにつけて外出する
新しい香水を求める
もうこの香水は使わない
この香水が疎ましい

香水瓶の大げさな佇まいにも危うさを感じる
誰にも言えない傷痕までも閉じ込めてあるような



初案啞 2015/6/15
危うげをしばし閉じ込め香水瓶
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十方自在雲呑むごとく鯉のぼり たけし

2018-05-05 | 

十方自在雲呑むごとく鯉のぼり




少子化の波はいよいよ激しく
鯉のぼりも
ひとり息子のためだけの役目を
一度二度つとめると用なしとなる

最近はその鯉のぼりを観光地の自治体が
貰い受けて客寄席のイベントに使っている

夥しい数の鯉幟がはためいている様は壮観だが
なにか一抹、納得できない気持ちでながめてしまう



初案 2012/5
群し鯉十方自在雲を追う
群れし鯉を思い切って捨てた
雲呑むごとくで我が子の勢いと元気を鯉幟に託した
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キエンセラ組まれ解かれて花の塵 たけし

2018-05-04 | 
キエンセラ組まれ解かれて花の塵




東北、北海道の桜もいよいよ終わった
あとは「花は葉に」なって夏の到来だ

散り際の桜が好きだという人も少なくない
また川をゆるやかに下る花筏も風情がある

花筏と雅な呼称もあるが「花の塵」との呼名も捨てがたい
これを眺めていてあのスペインの「キエンセラ」の音調が浮かんだ


キエンセラの日本語訳

俺を好きになってくれる人は誰
誰だろう、誰だろう
俺に恋愛をくれる人は誰
誰だろう、誰だろう

出会えるのかも分からない
分からない、分からない
また、寄りを戻せるのか分からない
分からない、分からない

また、恋愛での情熱の元で生きるようこと望んでいた
きのうのように、幸福に感じさせてくれる恋愛での

俺を好きになってくれる人は誰
誰だろう、誰だろう
俺に恋愛をくれる人は誰
誰だろう、誰だろう
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無為無聊風なきときの風車 たけし

2018-05-03 | 入選句
無為無聊風なきときの風車 




風車であそぶ子供をみない
幼少期の残像の中にある風車は
笑顔に包まれたやさしい風と共にあった
ふとこの晩年の
無為無聊の日常に風車がまわっているような

入選 2018/5/9    朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
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鳥曇なかなか消せぬ涙あと  たけし

2018-05-02 | 
鳥曇なかなか消せぬ涙あと




泣きぬれた顔を隠して
夕暮れの道を歩いた幼年期
だれもいない公園でぶらんこを漕いでいると
何故か悲しkなったこともあった

そんな時は泣いた痕跡は消さないと帰れない
今の子供らにはこんな感傷はあるのだろうか



初案 2017/2/16
半仙戯なかなか消せぬ涙あと
「半仙戯」は適当でなかったように思っていたが
「鳥曇」の空をみて閃いた

【鳥曇】 とりぐもり
◇「鳥風」 ◇「鳥雲」
秋から冬にかけて日本で越冬した渡り鳥が北へ去るころの曇り空。その頃の風を鳥風ともいう。
例句 作者
鳥曇波のこみあふ隅田川 久保田慶子
また職をさがさねばならず鳥ぐもり 安住 敦
廃園にただ来しのみぞ鳥曇 藤田湘子
眼鏡より曇りはじめし鳥曇 亀田虎童子
腰痛のゆゑの不機嫌鳥ぐもり 原 赤松子
海に沿ふ一筋町や鳥曇 高浜虚子
振つてみるアフガンの鈴鳥曇 川崎展宏
毎日の鞄小脇に鳥曇 富安風生
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冥界に更衣とや石仏 たけし

2018-05-01 | 
冥界に更衣とや石仏





更衣は6月1日と決められているが
しばらく以前からこの風潮は一部の官公庁を除いて
自由のようだ

四季を通じて個人が自由な服装を楽しむ
鎌倉の寺社廻りなどをしていると
外国人も多く、コートを羽織る日本人の列に
半袖の外国人がいたりするのは珍しくない

そんな光景を路傍の石仏が
訝し気な眼差しをむけている


初案 2013/4/15
冥界も更衣なり石仏
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