名古屋から旧友が久しぶりに来ることになった。あわてて焚き火の準備をする。茶樹の根っこで熾火を作って七輪にいれ込む。そのうちに、なーんと、七輪がスローモーションのように割れていったのだ。この七輪は元の地主が山に埋めてあったものを掘り出したものだった。だから、もともと見るからに危ういガラクタでもあった。
しかし、毎月のように使っていてもう10年は経っている。よく頑張ったものだと頭が下がる。けっこう、厚さがあったこともわかった。確かに、ひびができていたのは確認済みだったが、こんなにきれいに自壊するとは。人生初めての目撃となる。七輪に衝撃を与えたものでもなく、七輪みずから終末の姿を見せてくれた。ここまで頑張ってくれた大団円を看取った瞬間でもあった。
今までの豊穣を産み出してくれたのを感謝しながら、おもむろに次の七輪に熾火を移す。七輪の原材料は、植物プランクトンの化石が堆積した珪藻土だ。珪藻土は呼吸もするので人間にも環境にもやさしいということで壁にも活用されている。炭も七輪も、遠赤外線を輻射するダブル効果で肉や魚の外側をパリッと焼き、中側をジューシーにすることで、旨味をますます引き出す効果がある。
その後は、旧友とともに、次の七輪でお湯を沸かしコーヒーを入れたのは言うまでもない。今回は定番の焼鳥やクサヤについては焚き火の熾火でじっくり焼いてみた。遠方からやってきた旧友は手術して間もないにもかかわらず、その元気さに煽られる。夕方には長野に行って泊っていくという。予約していないので泊りがダメな場合は車中泊するともいう。もっぱら「閉じこもり」状態に張り付いているオイラにはまぶしい行動力だ。
割れた七輪を少し砕いて、砂利にする道に撒くことにする。土・道に還ることで、これで七輪も循環することになる。破砕しても役に立つことの証明だ。
さて今後は、くたびれた七輪からやや新しい七輪に代わるわけだが、今までとは違う感触を楽しむことになる。エネルギー・電力事情が厳しくなったウクライナに七輪を贈ったらきっと喜ばれるに違いない。