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抜根した茶畑の跡地は雑草の海と化した。雨の連続も痛し痒しだが、茶樹の肥料がまだ効いているせいか、裸地から芽を出した草も樹も一斉に自由を謳歌している。その中でも、1m以上の高さのノリウツギ(糊空木)が15本以上も自然発生していた。6月中旬には玄関入り口に純白のノリウツギが勝手に咲き出していたが、その種が茶畑に散布・埋蔵されていたのだろうか。
さすがに、これだけ野生化してしまうといつのまにかジャングルとなってしまう。花は気に入っていたので今のうちに移植することに決めた。根もしっかり張っているのである程度カットしながら鶴嘴の出番だ。相手も場所をわきまえていないから掘り出しに時間がかかる。一日に2本くらい移植できればいいか、と雨天の合間にしこしこと作業を開始する。
玄関入り口近くに咲いていたノリウツギのきょう現在では、花はすっかり枯れてしまっているが、翌年までこのまま残るらしい。和歌山の山間部では娘を嫁に出すとき、「ノリウツギの花が無くなるまで返ってくるな」と、送り出したという。
ノリウツギは和紙を作る時の「糊」に活用されたが、アイヌは幹の中空を利用して芸術的な「キセル」を作っていた。また、根っこからは「パイプ」も作っていたがこれは希少価値もあり高価な芸術品だ。
道の真ん中に生えていたノリウツギを真向いの3面のガーデンにやっと移植する。しかし、ノリウツギ以上に繁茂しているのが、「コムラサキ」だった。この二大巨魁を移植しないとガーデニングを開始できない。コムラサキの移植もやらなければならない、と焦りのストレスが心を支配する。
一日一善ではないが、なるべく体を動かすしか道はない。土をしっかり保持しながらの移植は成功したが、土を取り逃がした根だけの樹は葉に元気がない。頼みは雨天だった。雨が降りそうな前日に移植をするようにしている。炎天下での移植は禁物だ。あたふたしながらとりあえず、12本の移植は完了した。うまくいけば、ノリウツギの純白な花に囲まれた楽園ができるはずなのだが。そんな妄想に浸りながらきょうも草刈りをやってみる。