日本の中央で近代林業の中心地だった浜松市龍山の散策会に行く。
地元の楠さんが今ではあまり利用していない昔の通学路に焦点を当てた開発コースだ。
そこに散策の看板を立てたり、山道をふさいでいた杉枝をどけて当日を迎えた楠さんのボランティア精神に頭が下がる。
林内の薄暗い「通学古道」は、間伐もされず下草もない現状に日本の林業の実態を見る。したがって、土砂崩れも少なくない地域ともなっている。
親子三代にわたって石垣を積み重ねながら茶園を作った場所が「瀬尻の段々茶園」だ。
平地のない山間地は石を集めて少しでも平地を作ることから暮らしが始まるという。
その典型の藤原さんの家が直下にあり茶工場も作動している。
高低差が100mもあるこの石垣の端には「野猿」と呼ばれる「索道」で道具や収穫物などを稼働させているのが見える。
「通学古道」のてっぺん付近で、瀬尻国有林を水源とする不動沢から落差32mもある「不動の滝」に出る。巨岩を縫う姿と音とが雄々しい。
滝を見上げる橋の背後には天竜川と天竜美林の絵となる眺望を堪能できる。
滝の下付近には210段の階段もある遊歩道があり、紅葉を愛でながら歩いていく。
あまりにもみずみずしい滝と紅葉と空気のせいか、突然詩吟を吟ずる参加者がいた。
「通学古道」を生かした観光ツアーも企画できないものか、役所は残念ながら当てにできないから、こうした民間からの一歩が大切だと痛感する。説明のための写真パネルも用意してくれた楠さんの思い入れが光る散策会だった。