雨あがる里 333 × 242 F4号
前回谷川岳での体験を描きましたが思いのほか評判が良かったので今回は便乗してその第二回目です。
長きにわたって山登りをしていると思わぬ体験やミステリアスな現象を好むと好まざるに関わらず体験をします。
それに私、意外と霊感があるんです。でも怖いです。
ハッと胸の中へぶつかるような冷たい空気を感じたり、周りが徐々に冷たく重い空気に変わったり、いきなり全身が重苦しい環境の中へ放り込まれたり、国道を運転していると分離帯にこの世の物でない男が立っていたり、水辺で記念写真を撮り現像を終えた写真を覗くと水面には正に鬼畜の男の顔が水辺から皆を睨んでるとても恐ろしい写真を撮ってしまったりいろいろな体験をしてます。
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今から40数年前の友人と二人で雪山山行(2月)にと甲斐駒ヶ岳の登山です。 (南アルプス赤石山脈北端標高2967m)
雪積る戸台川を、ほぼ一日がかりで歩き今夜宿泊予定の仙水小屋に到着、仙水小屋のやぶさんに(矢吹氏)久々に会える楽しみも
吹っ飛んでしまった。無人の小屋は静まり返り我ら二人を向かい入れてはくれなかった。
その夜は仙水小屋テントサイトにテントを張り遅めの食事をとりアルコールの酔いも手伝い我らは寝袋へ潜り込み寝に着いた。
誰かが我らのテントへと向かってくる。
アイゼンを装着した足音はどんどんと近づいてくる。
ライトをつけ時計を見る真夜中の2時だ。
誰がこの時間に雪を掻き分け歩くだろうか。
あぁぁ とうとテントのすぐ側でその歩みは止まった。
声を掛けてくるだろうか? 小屋には入れないからテントへ泊めてくれと言うだろうか。
だが足音は無言だ。
疲れのせいで夢を現実と感じたのだろうと思い直して横の友を見ると苦笑いをして深く寝袋を顔に被せ寝に着いた。
私も友と同じように再び寝の世界へと移る。
深い眠りへの誘いに身を任せていると、テントの周りを誰かが歩く足音に気付く。
あの足音だった。
テントの周りをギッユ ギッユとアイゼンを装着した足音は恐怖と共に回り続ける。
永遠に続くのか、気の遠くなる一夜は恐怖が支配する闇の世界。
だが、我らは何時しか眠りについたのだろう夜は開け東の空は今日の快晴を約束するほどに輝いている。
友も昨夜の出来事に気付きながらその事に関しては何も語らない。
「まいったなぁ 昨夜は」と顔しかめ溜息を吐いた。
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その年の某大学の山岳部が甲斐駒の頂上手前で滑落し一名がまだ行方不明とのことだと下山した
後に山岳雑誌の記事で目にした。
あれはキッと彼だったのだろう。
早く家に帰りお雑煮を食べたかったのかもしれない。
こうやって書いていると鮮明に当時の状況が思い出される。
小屋のやぶさんは彼の結婚式の為に故郷新潟へ帰省していました。
ではまた。
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