不定期掲載ガンダム記事、"宇宙世紀に散ったキャラクターたち"。
今回は作戦成功のため隊長の制止を無視。結果、極寒の地に散ったヘアスタイルを気にする男。
"機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争"より、アンディ・ストロース。
宇宙世紀0079。
ジオン公国軍と地球連邦軍との間に、人類史上最大の大規模な戦争が勃発した。
後に一年戦争と呼ばれる、地球圏全体に及んだこの戦い、
人型兵器、MS(モビルスーツ)を実戦投入したジオン公国軍は、
破竹の勢いでコロニー群や小惑星基地,月,地球の半分を制圧。
だが、ジオンに遅れながらも、連邦軍も極秘に開発したMSで巻き返しを計る。
同年12月。
開戦から間もなく一年が経とうとしていた。
勢力は逆転し、地球のジオンはほぼ壊滅。
宇宙でも拠点を尽く攻略され、ジオンの戦力は大幅に減退する。
この頃になると、ジオンの敗北は濃厚になっていた。
そんなとき、連邦軍が極秘に新型のMSを開発していることを察知する。
その新型のMSはニュータイプ専用の新型のガンダム。
連邦軍のニュータイプの少年、アムロ・レイ。
そして、彼の駆るガンダム。
この一機のMSの登場によって、ジオンが劣勢になったといっても過言ではないほどだった。
それの新型が間もなくロールアウトされる!
その情報をキャッチしたジオンは、
月面のグラナダ基地からガンダムの奪取、若しくは撃破の命令を出す。
命令を受けたのは、特務部隊"サイクロプス隊"。
新型ガンダムがテストされていた連邦の北極基地。
そこへ静かに迫る、ジオンの潜水艦(U-99 ユーコン)の姿があった。
「目標地点まで5海里、サイクロプス隊、発進準備はよいか?」
「発進準備よし。」
「サイクロプス隊、発進!」
ユーコン底部のハッチが開き、4機の水陸両用MSが発進する。
ハイゴッグ3機と、隊長機のズゴックE(エクスペリメント)。
暗く冷たい北極海を突き進む。
ズゴックで先頭を進む、隊長のシュタイナー・ハーディが隊員に告げる。
「想定時刻より15分遅れている、全機、速度を30に上げる。」
くわえタバコをしながら続けるシュタイナー。
「上陸時刻、15:00変更なし。」
クシで髪を梳かして、ヘアスタイルを整える隊員のひとり。
アンディ・ストロース。
重要な作戦前に余裕のある行動だ。
アンディ以外にも、スキットルからウイスキーを飲むミハイル・カミンスキー(通称:ミーシャ)、
ポルノ写真をコックピットに貼り付けて、バンダナを締めるガブリエル・ラミレス・ガルシア。
エキスパート揃いの特務部隊サイクロプス隊4人は、リラックスして作戦に臨んでいた。
北極基地手前で不自然な海底トンネルを発見したサイクロプス隊。
トンネルが基地内部に通じていると判断し、
隊長のシュタイナーとアンディは、そのトンネルへと進む。
ミーシャとガルシアはそのままジェットパックで上陸。
基地を急襲し、新型ガンダムを捜しながらも、迎撃に出たジムを次々に撃破してゆく。
だが地上にある格納庫や輸送機にそれらしきものは見当たらない。
シュタイナーとアンディが入ったトンネルは、やはり連邦基地に通じていた。
そのまま地下の基地内部へと侵入し、ジムを撃破しながら地上へと進む。
アンディが先行し、リフトで地上を目指す。
シュタイナーは後方で追撃してくるジムを食い止めつつ、アンディのハイゴッグを追っていた。
「アンディそっちの様子はどうだ?」
「リフトの出口に近付いています!」
「先を調べろ警戒を怠るな!」
「了解ッ!」
リフトを昇りきった、アンディのハイゴッグは眼前にシャトルを発見する。
「隊長!ヤツらシャトルを用意しています!ブツはコンテナに入っている模様!」
シャトルのエンジンは既に点火されており、ブースターからは煙があがっていた。
コンテナがリフトで積まれている最中だった。
アンディが送信したシャトルの画像を見て、シュタイナーが焦る。
「発射を阻止しろ!ロケット弾の使用を許可する!」
「了解!」
そういったアンディだったが、シャトルの脇にジムが一機。
アンディのハイゴッグに気付き、マシンガンを放ってきた。
ジムのマシンガンに阻まれ、ロケットランチャーが発射できない。
マシンガンを避けるため、リフト出口に身を潜める。
「ジムが護衛に付いています、動けません!このままじゃ逃げられます!!」
そうアンディが叫んでいる最中、とうとうコンテナの積載が完了し、シャトルのハッチが閉じられた。
「俺が援護する、しばらく待て!!」
リフトで上昇中のシュタイナーがアンディに待つように指示する。
「ヤツら秒読みに入っています! 間にあいません!強行します!!」
そういってスロットルを引き、ハイゴッグを表に出すアンディ。
「待て!アンディ!!」
シュタイナーの制止を無視し、ロケットランチャーを発射させようとする。
しかしジムのマシンガンをまともに食らい、うち一発がコクピットに当たり、
アンディは頭部を貫かれ即死する。
「ぐあああああぁぁ!!!」
アンディの断末魔が響き渡る。
「アンディィィィィ!!!」
シュタイナーが叫ぶ。
全身にマシンガンを浴びたハイゴッグは、後ろにゆっくりと倒れる。
真後ろにはシュタイナーのズゴックが到着していた・・・。
倒れたハイゴッグからロケットランチャーが暴発。
シュタイナーのズゴックをかすめて背後で爆発。
その反動で落下してゆく、シュタイナーとアンディのMS。
同時に爆音を上げて膨大な煙を吐きながら、シャトルが発射された。
新型ガンダムは宇宙へと飛び立った。
連邦の新型ガンダムの奪取・撃破の任務は失敗してしまった。
ミーシャとガルシアのハイゴッグも、任務失敗を悟り茫然とする。
戦闘が停止した北極基地。
煙を上げ、沈黙する撃破された連邦軍のジムの残骸。
そして、滴る鮮血。
変わり果てたアンディを抱きかかえ、雄たけびをあげるシュタイナー。
寒々とした北極の空に、それが響き渡る--。
アンディ・ストロース。
ポケットの中の戦争で、まだオープンングもかからない、
冒頭のシーンで真っ先に死んでしまう、不遇なキャラクター。
だが、このほんの5分ほどのサイクロプス隊の北極基地急襲シーンは強烈に印象に残る。
そのため、このアンディも、登場時間がわずかであっても、記憶に残っている人は多いと思う。
他作品と比較して、戦闘シーンが極端に少ないポケットの中の戦争で、
もっとも見応えのある戦闘シーンといっても過言ではない。
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争。
ガンダム生誕10周年を記念して、初めて作られたOVA作品。
これまで制作に携わって来た、原作者の富野由悠季氏が携わらなかった初めての作品でもあり、
ジオン側からの視点で物語が描かれた作品。
さらに主人公が民間人の少年という、新しい試み満載の作品。
一年戦争の末期を、アムロらホワイトベースから離れた、
ほんの短いエピソードを劇的に描いた素晴らしい作品。
メカニックのかっこよさ、キャラクターの魅力。
ガンダム作品が溢れ返った今となっては、本作はマイナーな作品になってしまったが、
本作をベストに上げるガンダムファンも少なくない。
自分はガンダム入門には、本作を薦めている。
ガンダムの世界観や専門用語を知らなくても楽しめるからだ。
アンディがやられた際、シュタイナーのズゴックは真後ろに居た。
強行せずにシュタイナーの到着を待っていれば、
もしかしたらシャトルを撃破できていたかもしれない。
アンディはシュタイナーがどこまで来ているのか判らず、
任務遂行のため、決死の覚悟でロケットランチャーを発射しようとした。
護衛のジムも、シャトル発射のブーストでやられたように見えた。
ジムのパイロットもまた、決死の覚悟でシャトルを守り抜いたのだろう。
最後のシュタイナーの雄たけびからも判るように、
アンディは仲間から信頼されていた、大切なメンバーだったのだろう。
アンディを失ったのち、サイクロプス隊は司令部に隊員の補充を要請。
そうして、新たにサイクロプス隊に配属されるのが、
ポケットの中の戦争の、もうひとりの主人公、バーナード・ワイズマン伍長(通称:バーニィ)。
そして、サイクロプス隊が撃ちもらした新型ガンダムは、
サイド6の中立コロニー、リボーへと運ばれる。
その港で、そこに住む少年アルフレッド・イズルハによって、たまたま撮影されたコンテナが、
北極基地から発射されたガンダムそのものであり、
それを、ひょんなことから手に入れてしまうバーニィ。
こうやって中立コロニーを舞台に移し、
少年の心に残る小さな戦争、"ポケットの中の戦争"の物語がスタートすることになる。
次回は、"敗走中に立ち寄った村が不運にもゲリラの村、部下の醜態でゲリラに襲撃される悲運な女隊長”。
トレカのアンディ・ストロース。
例のごとく、この記事のためだけにヤフオクで購入。
SDガンダムガシャポン戦士のハイゴッグ。
左は隊長機のズゴックEと。
右は北極基地でやり合った、ジム寒冷地仕様と。
森永のガンダム総集編チョコスナックのハイゴッグ。
小さいながら、ハンドミサイルユニット展開中で、かなりデキの良いフィギュア。
SDガンダムカードダスのサイクロプス隊。
なぜかミーシャが隊長のような扱い。
ケンプファーのパイロットだから仕方がないか。
冒頭で死んでしまうアンディは幽霊扱い・・・。
SDガンダムカードダスのサイクロプス隊のカード。
ユーコンの艦長がシュタイナーになっていたり、
ズゴックEのパイロットがシュタイナーじゃなくミーシャになっていたり、
4機のうちシュタイナー機1機だけのはずのズゴックEが2機いたりとめちゃくちゃ。
SDガンダムカードダスのジム寒冷地仕様。
ガンダムカードダス パッケージコレクションのハイゴッグ。
ポケットの中の戦争のガンプラパッケージは超カッコイイ。
SDガンダム外伝では、聖機兵物語で、戦士ハイゴッグとして登場。
二機居るから、ミーシャ機とガルシア機。
円卓の騎士編には、モンスター ゴーゴンゴッグとして登場。
ただの"ゴッグ"表記だが、水色のカラーリングやデザインから、
おそらくハイゴッグがベースだと思われる。
ぜひもう一度鑑賞してください。
1話から6話までぶっ続けで。
そして号泣しましょう。
できればクリスマス直前に。
まだ半年以上先ですが・・・。