仕組みとアプローチ － 佐久間信盛はなぜ丸山砦の指揮官に配置されたのか

　長篠の戦いでは丸山砦を佐久間信盛らの約六千ともいわれる軍勢が守っていたのにあっさりと武田勢の攻撃で退却しました。
　この件については先月３０日の記事、サブタイトル「囮と罠がテンコ盛りだったように見える『長篠の戦い』」　の通り、最初から囮であり「釣り野伏」に近い戦闘を展開する為に武田勢を分断、分散させるのが目的だったと見ています。
　佐久間信盛をこの囮部隊の指揮官に配置したのは「退き佐久間」と言われる位に退却戦に熟達していたからと考えているのですが、これについては疑問に見る考え方も有るのかも知れません。
　それは「退却戦に秀でているのなら退却する最中に武田勢へかなりのダメージを与えてしまい、これに警戒して武田勢が深追いしなくなってしまうのではないか？」という見方です。
　これについては個人的には次のように考えています。

　「仮に退却戦がヘタクソな指揮官であった場合、さもあたかも囮で誘き寄せる為に退却しているように武田方が思ってしまうような下手な芝居の退却をしてしまう可能性が大きいし、更にその退却の途中で織田勢の将兵が多く犠牲になってしまうから」です。
　丸山砦を攻め落としたのは武田方の有能な武将、馬場美濃守信房（馬場信春）の部隊です。
　「その馬場信春が、『この退却は織田方の罠で有る』、と見破ってしまうような下手な演技はできないわけで、ここで当時に於いて退却戦の分野で最先端だったと思われる佐久間信盛を指揮官にする事で馬場信春でも見破れないような『お芝居』が出来たし、更にその退却最中で織田方の将兵が損害を被る程度を最低限にとどめる事が出来た」、のではないでしょうか。