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日記、日々の想い 

どうしたっ⁉︎野生はっ!しろっ‼︎

 本当に、ちゃんとした犬に。なって欲しかったんだ、お父さんはっ!それだけだった。赤ちゃんの時は、まあ、綺麗なわんちゃんっとか、言われたじゃないか。生垣を、その場跳びで、飛び越したし。まあ、その場跳びで、食卓に乗ったのは、余計だったけど。あの広い公園を、真っ白い身体で、疾走するしろ。格好良かったじゃないか。バイクと並走して散歩するアイリッシュセッター程では、無かったけど。
 腹、出して、寝るんじゃないよ。ばんざいポーズで、大股開き、どんだけふざけんてんだよ。熊に襲われたら、どうすんだよおっ。ボディスラムされたら、お腹が、お煎餅になっちゃうでしょうよ。おおかみらしく、してくれよ!あっ、いぬか….
  大陸の草原で、狼は、一頭では、巨体の熊には、太刀打ち出来なかった。ただ、息の切れない長い走力を持ち、群れで行動する狼が、草原での生存競争を勝ち抜いたのだと言う。そして、草原の覇者となった。一方の熊は、敗れて、森に逃れるしかなかった。現在の生態系は、そうして、生まれたようだ。
 と、言う事で、狼は、草原を制覇し、熊は、森に潜み、時々に、人里を襲う。そして、しろは、… 野生の本能の一欠片も、感じることは、無かった。まあ、強いて言えば、しんみり、こんもり、しみじみの時に、身を隠そうとしたこととか。首輪が傷んだ時に、散歩中、うっかり首がすり抜けて、逃亡を計ったこととか、そんな時ぐらいか。
 好物だったのは、もちろんすき焼き肉とかだけど、あとロールパンも、好きで、これを、えこ贔屓のお母さんから、このお父さんに隠れて、こっそり貰った時の行動が、野生と言えば、野生だっただろうか。肉は、その場で、犬食いするが、ロールパンは、取り置きして、食べようとするようだった。
 しろは、一階の床の間のある和室前の濡れ縁に、潜り込むのが、お気に入りになっていた。夜は、もちろん犬小屋で寝るが、昼間は、濡れ縁の下を、好んだ。夏場になると、南向きの庭に居るしろは、とにかく暑い。舌を出して、「はあっ、はあっ、はあっ」だ。犬は、汗腺もないし、汗はかかない。だから、夏場は、舌を、出して、体温調節するしかない。しろは、毛並みは、綺麗だが、短めで、粗くて、どちらかと言えば、暑さに強い犬とも言えた。
 犬は、雪が降れば、こたつで丸くなる猫と違って、庭を駆け回る。しろも… すいません。こたつに入るの大好きでした。そうして、寒さにも弱いしろだったが、もちろん、犬だから、やはり、暑さにも、弱かった。寒さに弱くて、暑さにも弱かったら、強い時ないじゃん、しろっ!
 まあ、それは、ともかく、しろは、夏の日中は、はあっはあっ言いながら、濡れ縁に潜り込んで、日除けしようとするのだった。ただ、それでも、足りずに、地面を、掘る。掘る、掘る。掘れば、冷んやりした地中が現れる。そこに、お腹擦り付けて、潜って、身体を冷やすのだ。
 実は、濡れ縁の下は、雑草除けに、綺麗に玉砂利を敷いていたのだが、しろに、すっかりと掃き出されてしまった。しろは、毎日、更に掘り込んで、新しい冷んやりした土を、剥き出していた。掘り過ぎて、そのうち、家が傾くかと心配する程だった。まあ、これは、野生の行動なのだろう。ただ、もっと野生っぽい行動が、あった。
 濡れ縁の下は、しろとしては、完全に自分の家、別荘だったのだろう。だから、お母さんから貰ったロールパンを、そこに隠そうとしたのだ。掘った地面に埋めて、土をかけて、隠す。野生の狼などの肉食獣が良くやる自分の獲物を隠して、日を掛けて、食べようと言うのだ。
 しかし、問題は、しろの野生が、中途半端なことと、忘れっぽい性格だった。せっかく隠した獲物だが、餌は、毎日貰える。下手をすれば、牛肉とか。だから、埋めたことを、忘れてしまうのだ。しかし、しろの行動を観察していると、ふと、思い出すようなことが、あるらしかった。しろが、潜り込んだ濡れ縁の下で、必死に掘り起こしている。無いっ⁉︎
 我が家の庭は、このT川水系の土壌に相応しく、湿潤な粘土質で、巨大なミミズの住処でもある。海岸の砂丘地帯にある実家で育った自分などは、見たこともない、巨大なミミズだ。そのミミズの住む地中に、しろは、絶好の彼らの餌を、埋めてくれる訳だ。ミミズが、ご馳走様です、と。そんなロールパンなんて、いつまでも、ある訳無いだろう。バカじゃないの、しろっ!
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