未明だな
遠く、ジェット機の爆音
ここは、空港の隣町だから
珍しいことじゃないけど
でも、この時間だ
きっと、離着陸の時間を
延長しているんだろう
巨大な台風が
この首都圏の半島を
かすめて行った今日は
結構な、嵐になった
その嵐が、まだ
過ぎ去っていないと
思い込んでいたけど
あのジェット機の爆音だ
ふと、真夜中の庭を
覗いてみようと
思い立って、雨戸を開けると
雨が、止んでいる
風も、弱い
巨大な台風だから
風は、かなり残るって
天気予報は、言ってたけど
そんなこと、ないみたいだ
嵐は、もう
この地からは
去っていったんだ
気持ちが、軽くなって
もっと、空を覗き込むと
空は、もう薄曇りのようだ
何故、分かるのかと言うと
真っ暗なはすの大空に
仄白い影の棚引きがあって
濃い闇の空の底との
微かなコントラストだ
小さな光も、あって
それは、動かない
ジェット機の灯火ではないな
動かない光だ
きっと、雲間の星だ
ただ、ジェット機は
灯火も見えずに
その在処が、分からない
さっきの爆音は
遠ざかっていって
まだ、遠くで
低く、唸り続けている
でも、もっと耳を澄ますと
違う方角から
新たな、遠い爆音が
唸り始めた気がした
雨戸を閉めても
いつもまでも、ずっと
爆音は、低く
唸り続けている
空港は、きっと
この大嵐で
多くの出発便や到着便が
飛び立てずに、また
降りられなかったのかな
多分、空港は
何時間もの
時間延長をしていて
ジェット機が、こうして
未明の夜空を
飛び交っているんだろう
ただ、空港は
このコロナ禍て
この一年半もの間
半ば、死の空港だった
でも、今日からは
緊急事態宣言が、解除されて
その甦りの
このコロナ禍て
この一年半もの間
半ば、死の空港だった
でも、今日からは
緊急事態宣言が、解除されて
その甦りの
端緒のその日に
台風は、襲ってきたんだ
台風は、襲ってきたんだ
そうだな
何年か前迄の自分は
こんな日には
まだ、空港の片隅で
疲れ切った身体を
昂った神経で
奮い立たせながら
働いていたんだよな
…でも、今は
リビングのソファに
横たわっていて
こうして、遠く
ジェット機の爆音
その微かな唸りを
耳の底で
何となく、追っている
ただ、それだけだ…