倒れ込むみたいに
電車の座席
座り込んでいた
息を、ついていた…
ああ、もう
明日から
この電車は、乗らなくて
良いんだよな
いや、乗らない…
なんなんだろう
あんなに、毎日
嫌で、嫌で
仕方なかったよな
あいつの顔も
こいつの顔も
みんな見たくなくて
ああもう、ちょっとだよって
思ってたんだよな
でも、さっき
あの少し、薄暗い
ささやかだった
あのオフィスで
やっぱり、辞める
部下のおんなの子に
ごめん、お先って
言った時だ
みんな終わった…
バブル崩壊だとか
構造不況だとか
それは、ともかく
失われた20年なんて
後で分かった話だから
そんなこと、知る訳なかった
でも、リストラだってさ
希望退職だってさ
募集の三倍、集まっちゃって
二週間の募集が
たった二日で、終わった
本当、笑えたよな
あの会社
さすがに、うんざりな
会社だったよ
…でも
なんでだろう
この夜中の電車
みんな疲れ切っていて
でも自分が、いちばんに
疲れ切っているみたいで
だけど、自分は
明日からは
このひとたちとは
ぜんぜん、違うんだ
こんな当たり前で
でも、凄く重たい
ただ、くびきでしかなかった
この日常は
自分は
終わらせたんだよ
だから、このひとたちとは
もう、自分は
ぜんぜん、違う
…そうだな
この疲れ切っているみんなは
でも、みんな
この自分の
この、訳の分からない
喪失感なんて
きっとない…