引っ越す前の実家
微かな記憶
ねこのたま
ただ、おまえは
年中追い回していた癖に
たまがいなくなった
そのことの意味を
分からなかった
いなくなっちゃった
寂しい、それだけ
きっと、両親は
おまえが追い回していたたまが
弾けて消えた事を
隠したのかも知れない
シャボン玉のようなたま
でも、大丈夫
おまえは、いのちを拾った
いぬのぽち
そして、おまえは
ぽちを捨てた
いぬのいのちを捨てた
いぬは、儚い
そして、いのちは寂しい
その上、おまえは
つみびとになった
つみびとは、寂しい
でも、ずいぶんと歳月
おまえは、つみを償えた
まっしろなこいぬ
もう、つみは犯さない
永遠に、犯さない
やがて、ちゃいろいこいぬも
もう、大丈夫
二度と失う事はない
そんな訳はない
まっしろなこいぬは
やがて,おじいちゃんになって
シャボン玉は、弾けた
ちゃいろいこいぬも
やがて,おばあちゃんになって
シャボン玉は、弾けた
おまえは、ひとり
いのちは、儚い
生きることは、寂しい…