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日記、日々の想い 

引っ越した先には、いつも海がない

おまえは、海辺の街の育ち
でも、あんまり
「我は、海の子」じゃなかった
色は、真っ黒だったけどね
確かに、日焼けは
直ぐにする方だったからね
でも、そう
不健康に、青黒かった
悪性扁桃腺の病弱
故郷の海は
湾のど真ん中
とにかく、波が荒い
海底は、侵食されていて
沖合に出るまでもなく
海は、直ぐどん深になる
1キロも沖合に出れば
深海魚みたいな魚が獲れる
そんな海は
もちろん、遊泳禁止だった
だから、おまえは
間違っても、泳がない
でも、同級生には
そうじゃない子も多かった
いや、殆どが
「我は、海の子」だった
おまえとは、違ってね
血色の良い真っ黒だ
そんな悪ガキ達には
遊泳禁止の海は
泳ぎ自慢、肝試し
かえって、格好の場所だった
1キロ沖合、どん深の海に
波浪観測塔と言う施設があった
泳ぎ自慢たちは
そこまで、往復して来ると言う
おまえには、信じられない話
プールでしか泳がないおまえだ
でも、間違いなく
泳ぎ自慢たちは、泳いでいた
監視員など、いるはずもない
当時の遊泳禁止の海
それでも
子どもの水難事故とか
一度も、聞かなかった
悪ガキたちが
もっと、もっと自由
そんな時代だったのかな
あれから、ずいぶん経った
独立して、何回か転居
でも、二度と海のある街には
住まなかった
本当は、住みたかったけど
でも、あの大津波があって
思い出したことがあった
実家から、海への道に
大正の大震災
その津波を生き残った
そんな伝承のある
傷ついた松の大木があった
やっぱり、海は
もう、いいか
あの遠い昔
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