懲りもせずに、再構成の投稿です。まだ、始めたばかりの投稿ですが。やはり、最初期は、一番拘りのある話ばっかりです。それで、定期的に、お目汚しをして頂けるような方も出来たようですので、調子に、すっかり乗ってしまいました。まだ、あんまり、読んで頂けなかった頃の投稿を見直して、再投稿してみたくて、もっと読んで頂きたくて、仕方がありません。調子に乗り過ぎて済みません。
それで、いぬの話です。犬は、何か、突き放しているようで、冷たい書き方です。いぬです。本当のところは、夫婦の間、いや、家族の間でも、わんこです。恥ずかし過ぎて、間違っても、他人に言えない、書けないので、くれぐれも、ご内密に、お願いします。あっ、えっ、あれっ⁉︎
と言うことで、しろとちびは、ちょっと、お休みします。えっ、休み?当たり前だろう。かったるくて、やってられないんだよ!さすがに、我が、飼いいぬです。やる気ゼロのしろとちびの、こころのこえです。あっ、妻の話では、いまだに、我が家に取り憑き、徘徊しているらしい、しろとちびの、霊のです。もちろん、自分には、見えませんが。使えないあのおやじは、おやじのくせに、悪口ばっかり書いている、と。むかつきっ放しだった筈の二匹の霊は、あのばんざいで、腹丸出しの得意のポーズで、安心して、高いびきで、寝ていることでしょう。
とにかく、これは、自分の犬の話、或いは、妻や子どもたちの犬への思いの原点にさえ、なってしまった話なのかも知れません。あっ、読んだと言う方は、ごめんなさい。読み捨ててください。
ついて来てしまったんだから、仕方がなかったんだよね。 自分の実家は、首都の隣県のK県の海辺の街にあった。その頃は、小学校の3、4年生くらいだったと思う。昔の五輪の少し前で、高度成長期だった。首都近郊でも、少し遠いその街の海辺の新興住宅地には、まだ、畑や空き地が、点在していた。実家は、小学校からは、かなり遠い街外れの高台にあって、身体が弱かった子どもの自分には、かなりきつい道のりだった。
その時代の、そんな空き地には、野犬が徘徊していて、群れをなしていたりもした。自分は、家が遠く、同級生との帰り道も、結局は、途中から、一人になってしまう。だから、野犬は、噛まれたら、狂犬病の心配もあったし、とても怖かった。ただ、何故、そんな野犬が、群れをなしてしまうかと言うと、家犬が、無闇に、捨てられてしまうからだ。動物愛護の意識など殆どなく、捨て犬の責任など、たいして問われない、そんな時代だったのだ。ただ、日本が、どんどん豊かになり始めた頃だったが、まだひと昔前は、人が、自分が食べる事さえ、精一杯な大変な時代もあったのだ。仕方がなかったのかも知れない。
捨て犬は、だいたい、子犬がされた。飼い主のもとに、帰って来れないから。多分、まだ、犬の避妊手術など普及していなかった時代でも、あったのだ。もちろん、動物病院など、聞いたこともなかった。犬は、多産だから、一度に何匹も、子犬が生まれる。飼い主は、その貰い手を探さなければならない。探しきれない場合もあるし、最初から放棄する無責任な飼い主もいただろう。この図式は、今の時代にも残ってしまっているんだろうけど。
ただ、当時は、もっと頻繁に、当たり前に、捨て犬が、行われていた。その場合は、箱に、少しの餌を一緒に入れて、道端に放置する。酷い場合は、何匹も、一緒に捨ててある。あわよくば、誰かが、拾ってくれるのではないかと、目につきやすい道端に、捨てるのだ。今も、そう言うことは、あるようだが、そんなことが、遥かに横行していた、そんな時代だった。
その子犬は、1匹だけ、ぽつんと空き地の道端に、捨てられていた。いつもの一人ぽっちの帰り道だ。大人の野犬は怖いが、子犬は可愛い。とにかく、可愛い!だから、いつも、そんな捨て犬の子犬がいると、気になっていた。気になって、可哀想で、仕方がなかった。ただ、母からは、野犬は、狂犬病などの怖い感染症もあるし、絶対に近づかないように、しつこく注意されていた。
きっと、子犬を気にする自分が、心配だったのだろう。自分はと言えば、母が、犬が、嫌いなのは、薄々気づいていた。多分、子どもの頃に噛まれたとか、そんなことが、原因のようだった。
しかし、その日は、もう我慢出来なかった。きゅーんっ、きゅーんって、泣いている。子犬だ!箱に入れられて、道端に。思わず、歩み寄っちゃう。すると、見上げてくる。助けを、求めているみたいに。もう、我慢出来ない。手を、差し伸べてしまった。
でも、お母さんは、絶対に駄目、と言うに決まっている。諦めるしかない。立ち去る… でも、あの子が。追ってきちゃったんだ。そんなことは、何度かあったけど。いつも諦めた。悲しくて、悲しくて。仕方がなかったけど。必死で走ったんだ。いつも。絶対、追いつかれちゃ、いけない。お母さんに、怒られるから…
そうだよ、逃げないと。走ろう!でも… ちょっと。振り向く。追って来ちゃった。きゅーんっ、きゅーんって。もっと、走らないと。お母さんに、怒られるから。逃げよう。とにかく…
とは、思った。だけど、足が、前に進まない。振り向く。少し、遠くなって。でも、立ち止まって、こっちを見ている。後年知ったのだが、犬は、近眼だそうだから、多分、匂いとか、音で、気配を感じていたのだろうか。でも、立ち止まって、寂しそうに。見捨てられたって、思ってるのかな…
もう、とぼとぼ、と。あの子を、見捨てて、良いのか。お前は、そんな奴なんだよな。いや、そうじゃないだろう。あの子を、守ってやれないのか。止まりそうな位に、ゆっくりと。歩いていた。気配は、感じていた。
やっぱりだ。追いついて来て、くれた。きっと、運命の子なのかも、知れない。いや、駄目だ。お母さんは、犬が、嫌いなんだ。走ろう。気持ちを、断ち切るように。前を、向いて。走れ! …
走れない。やっぱり、駄目だ。お前は、そんな奴じゃないよな。あんなちっちゃい子が。ちっちゃい身体で、一生懸命に走って。必死で、助けを求めているのに。お前に…
本当に。もう、我慢出来なかった。振り向いて。しゃがみ込んで。きゅーんっ、きゅーんって。抱き上げる。抱き締める。すりすりしてくれる。あったかい。やっぱり、運命の子なんだ。落としては、いけない。もっと、しっかりと、抱き締めて。歩き出した。重いランドセル。でも、きっとお母さんだって、許してくれる。ぼくの、運命の子なんだから…
庭のあちこちに、咲き誇り始めた、花々。でも、誰もいない。小鳥の囀りだけ。静けさ。その静けさに、ふと、甦ってくる。はしゃぎ回る子どもたちと、犬たちと。そして、その背景に潜む、子どもの頃、苦い思い出。思い返していた…