他人波が、好い

他人波に、揉まれるって
嫌いじゃなかった
満員電車で
見ず知らずの他人ばかり
たまに、危ない奴もいるから
少し、気を遣うけど
それだけでいい
他人波だから
みんな知らない他人
だから、みんなも
おまえを知らない
それが、良かった
だいたい、おまえは
他人に知られたら
変なやつだって思われるから
いや、変なやつだって
ばれちゃうのかな
他人と同じになれない
他人と同じにならない
他人と同じに出来ない
他人と同じにやらない
そんなやつだからね
ばれたら、引かれる
いや、ばれたら
引かれる、と思っていた
そんな、おまえ
ばれない他人波が
大好きだった
そうだよ、おまえが
誰も、知らないように
誰も、おまえを
知らないんだ
おまえは、誰にとっても
どうでもいい通行人
ただ、それだけ
押し合い、へし合いで
むかついたとしても
ただ、それだけ
たまに、むかつかれて
殴られそうになる
気をつけるのは、それだけ
そう思えた
他人波って
押し合い、へし合い
ただ、それだけで
誰も、お互いを
興味なんて、持たない
おまえが、興味を持たれない
持たれる訳ないけど
間違っても、持たれない
そう、思えた
でも、そうなんだよね
それは、半分嘘
それだけじゃない
押し合い、へし合い
暑苦しい夏
でも、真冬には
ちょっと、温かい
いや、真夏だってそう
本当は、真夏でも
おまえのこころは
凄く、凍っている
だから、ひといきれ
押し合い、へし合い
他人込みが、好い
温っかくなれて
凄く、凄く
他人波が、好い…