いや、無垢な時もあった
ものごころついて、しばらく
近しい家族だけじゃない
自我を、ぶつけていた
自我で、ぶつかり合っていた
剥き出しの自我
駆け引きなしに
他人を、傷つけ
他人に、傷つけられる
傷つけたら
傷つけ返されるけど
傷つけられたら
傷つけ返す
そんな風だったかな
でも、引越しをして
知らない土地
一月遅れの幼稚園
馴染めなくて
意地悪の嵐
毎日、泣いていたけど
そこからだな
無垢じゃなくなっていった
感情を殺すことを覚えて
思った事を、言わない
思ってない事を、言う
小狡さとも言うかな
それで、そうやって
揉め事から、逃れて
他人と合わせた
でも、だいたい
ひとの成長なんて
そんなものなんだろうし
そんな時期なんだろうし
おまえが、思うほどよりは
多分、ひとと同じだな
そうは、思うけど
ただ、そうやって
揉めたくない、で
小狡く立ち回っても
退いているだけだと
容赦なく、されたと思う
無垢の暴力、言葉も暴力
それが、無垢だった
どこまで行っても
小狡さ程度では
小賢しいとも、言うか
太刀打ち出来ない
無垢で残酷、暴力
無垢な残酷、言葉の暴力
逃げ切れない、執拗な無垢
無垢からは、逃げられない
やがて、そう悟って
小賢しい、小狡さは
適当に、そのまま
でも、小狡さの裏には
しっかりと無垢と言う刃物
そうして、おとなになった
そうだな、みんなそんなだ
おまえは、普通
みんな、普通
無垢な残酷の刃物を
隠したり、ちらつかせたり
小賢しく、小狡く
普通だな、それが…