おまえは、よく考えると
意外と前しか向かない
前向きと言う言葉は
似合わないけど
確かに、前を向いている
前しか、向いていない
そう思える
あの子どもの頃の
直ぐ、寝込んだ記憶
高熱を出して
うなされるような
そんなおまえは
おじさんのあの遺骸
真夜中の真っ暗な
あの霊安所の記憶
白布に包まれた
でも、ただの無惨な"もの"
いつも、纏わりつかれていた
決して、ぬぐいされない
あの頃のおまえは
確かに、後ろしか
向いていなかった、かも
おまえは、ああして
"もの"になるだけ
いつも、纏わりつかれたまま
引きずり込まれそうな
そんな風に、高熱の中
でも、ささくれだっていた
おまえの神経は
きんきんと痛んで
引きずり込まれ
呑み込まれ…
ただ、熱を出さなくなって
思春期引きこもり
そんなおまえでも
あまり、思い出にも浸らず
今日のこれから
そして、明日
やがて、明後日
そればかり、考えていた
どうしようかな
迷ってばかり
ただ、絶望は
なかったかも
あゝしようかな
こうしようかな
希望は、くすんでいたけど
先しか、考えないおまえ
確かにくすんでいたけど
確かに、希望で
そのまま、ずっと
前向きと言うほどではなく
でも、前を向いて
そのくすんだ希望を
追いかけるままに
前だけを見ていた
振り返ったことも、あるか
でも、そっくり後ろを向いた
後ろが、前になっていた
やっぱり、前を見ていた
前向きと言うほどの事はない
ただ、前を向いていた
振り返るのは、まるまる
後ろを前にしただけ
それを希望にした
くすんでいても、希望
そうして、今
くすんでいるけど
ちゃんと、前を向いたまま
だから、こうして
今も、生きているのかな
