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日記、日々の想い 

底なしの闇、魅入られたおまえ…

底なしの井戸って、でも
よく分かんないな
かあさんの実家には
釣瓶付きの井戸はあった
確かに、覗くと
底なしみたいで
覗くと、怖々
底なしの底の闇に
僅かな水の煌めき
あれが、底なし井戸
真夏には、伯父さんが
スイカを、吊るした
引き揚げると
物凄く、冷んやり
真夏の昼下がり
冷え切ったスイカ
味は、覚えてない
伯父さんが育てた
スイカは、とっても
冷たくて、美味しくて
忘れられない、その気持ち
味は、思い出せないけど
思いだけは、忘れてない
底なしの井戸の
でも、底はあった
そんな思い出だな
本当は、実家の井戸の方が
深かったのだと思う
砂地の海岸段丘
丘の上だから
いくら掘っても
水脈に当たらないらしい
物凄く深かったけど
新しい家だから
汲み上げは、モーター
家の中には
水道式の配水だった
井戸の上に、モーター
井戸は、覆われていた
のだと思う
でも、覗いた記憶がある
少し、空いていたのかも
確かに、ずっと深かった
かあさんの実家の井戸は
呑み込まれる程
大きかったけど
実家の井戸は、細くて
落ちる心配はなかった
でも、その深さは
ずっと深く感じた思い出
底が見えない
それ程の底
真っ暗な闇
でも、微かな煌めき
やっぱり、底だ
あったんだな
地方都市の海辺の住宅地
外れの高台には
なかなか、水道もガスも
下水でさえも
直ぐには、来なかった
高台の工事は、費用が掛かる
公共工事では
いつも後回しだ
下水道、水道
昭和30年代、後半かな
ガスは、ずっと後
おまえが、独り立ちした頃
それも、やっと
工事が始まった、とか
もう、覗く井戸
底のある底なし井戸
ぞんなものも
なくなっていた
昭和50年代
もう、でも
あの頃からでさえ
随分と、時間が経った
でも、おまえは
時々
覗いているよね
あの頃と、おんなじ
底なしの井戸
底のある底なし井戸を
覗いた後に、気づく
本当の底なし
おまえの井戸の底なし
でも、このおまえは
この目の前の世界
そのこちら側にいるから
底なしも何も
このこちら側
ここにいるんだ
見えないけど
だから、覗こうとする
それで、初めて気づく
このおまえは、不確か
ここにいるけど
見えないし、触れない
だから、井戸を覗くようには
覗き込めない、不確か
だから、もっと
覗き込む
おまえは、そこにいるけど
その不確か、その彼方
その彼方が
あるのか、無いのか
分からないまま
底なしの井戸
怖々覗いて、そのまま
魅入られている、みたいな
いくら覗いても、真っ暗闇
探っても、探っても
底なしの底なし
煌めきなど、見えない
真っ暗闇、底なし…
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