昨年末に、図書館から借りていた、葉室麟著 「風渡る」(講談社)を、やっと、やっと読み終えた。登場人物が多く、舞台も、九州地方、京、大阪、中国地方、四国地方に、飛んで、飛んで、飛んで、飛んで・・・、記憶力無しの老脳、悲鳴を上げながら。
「神の罰より、主君の罰を恐れよ、主君の罰より、臣下、百姓の罰を恐るべし」。戦国の世で、神の愛のため戦うと誓った黒田官兵衛。土牢の幽閉から逃れ、信長への謀反に暗躍、秀吉の懐刀となり勇名轟かせた策士でもあった黒田官兵衛。戦国の世で、信仰と戦いの論理のはざまに心を引き裂かれたキリシタン、黒田官兵衛の壮絶な人生を描いた長編時代小説である。
▢目次
(一)~(十八)
解説 湯川豊
▢主な登場人物
黒田官兵衛孝高(小寺官兵衛、シメオン)・幸・吉兵衛長政(松寿丸、ダミアン)、小寺政職、
ジョアン・デ・トルレス、ガスパル・コエリョ、ルイス・フロイス、アルメイダ、オルガンティーノ、カブラル、ヴァリニャーノ、
大友宗麟(ドン・フランシスコ)・義統(よしむね、長寿丸→義統→吉義)、奈多方(なたのかた)
山口左馬之助(アンドリュース)
カタリナ、
清原枝賢、清原いと(マリア)、
小西弥五郎行長(アゴスティーニョ)、小西隆佐(堺の商人、ジョーチン)、
塩飽の九郎右衛門、金剛又兵衛
足利義昭(覚慶→義秋→義昭)
織田信長、明智光秀、荒木村重、別所孫右衛門、松永久秀、蒲生氏郷、
関白豊臣秀吉(木下藤吉郎→羽柴筑前守秀吉)、丹羽長秀、
竹中半兵衛、毛利元就・輝元、小早川隆景、宇喜多直家、高山右近、
長宗我部元親、三好康長、一条兼定、内藤如安(ジョアン)、
細川藤孝・忠興・玉子(ガラシャ)
島津義久・義弘・家久、
▢あらすじ・感想等
信長、光秀、秀吉、家康等々が次々と登場する、類を見ない激動、変革の時代、戦国時代を描いた時代小説は、数え切れない程有ると思うが、キリシタンがこれほど歴史の展開に深く広く関与していたとする作品、今回初めて読んだような気がする。
秀吉に、「最も警戒したのは黒田官兵衛」と言わしめた智謀家黒田官兵衛と、修道士ジョアンを主人公にし、実在、虚構の人物を登場させ、絡ませながら、激動の時代を描いている作品だ。
人を信じない信長は、何度も裏切りに有っているが、実は、その影で裏切りを扇動、暗躍していた軍師がいた?とは。
光秀を、追い詰めて、本能寺の変へ導いた影に、暗躍していた軍師がいた?とは。
稀代の智謀家、竹中半兵衛と黒田官兵衛の出会い。半兵衛の企てを受け継ぐ官兵衛。天下激動の裏で智謀家二人が暗躍していた、とは。
大友宗麟の務志賀(むしか)の夢は?、
九州大名、豊後大友宗麟、薩摩島津義久・義弘、肥前竜造寺隆信、せめぎ合いは・・・。
ジョアンの出自が、ついに明らかに・・・。
物語は、関白豊臣秀吉が、朝鮮、明に対して野望を抱き、乗り出そうとしているあたりで、幕を閉じているが、最終章(十八)では、官兵衛が、大阪天満の南蛮寺で、明智光秀の娘で細川忠興の妻玉子(ガラシャ)、清原いと(マリア)と出会う場面を設けており、呆然とする官兵衛。
「わが知恵をキリシタンのために使えというのか」、
「豊臣の天下を覆し?、天下を二分する策?」、
その後の官兵衛の暗躍を暗示させており、
玉子(ガラシャ)、いと(マリア)の壮絶な悲劇が迫っていることを感じさせている。
以後、官兵衛は、如水(じょすい、Josui Simeon)という号を使い「水の如く自在に生きよう」と決意する。
南蛮寺から出た官兵衛とジョアンは、海から吹き付ける風を受け、
キリシタンという風と共に生きてきて、すべて風によって動いてきたような・・・、
これからも新たな風が吹いてくるに違いない・・・と、思うのだった。
朝鮮出兵、関ヶ原に繋がる続編が有りそうな場面で、物語は終わっている。
惜しくも今後の作品にはお目にかかれませんが・・・
活字を追っていく毎に、息を呑み、張り詰めた緊張感が失せません。
寒さの折柄、ご自愛くださいませ。
黒田官兵衛・・・、
名前だけは知っていても、これだけ存在感が有ったとは、知りませんでした。
世の中、知らないことだらけ・・です。
コメントいただき有難うございます。