(2016年11月17日 国営昭和記念公園)
昨年 書棚に詰め込まれていた古い書籍、辞書等を 大胆に整理処分したことが有ったが、その際に 多分 長男か次男かが学生時代に使っていたものに違いない 文英堂の「小倉百人一首」(解説本・参考書)が 目に止まった。パラパラと ページを捲ってみたところ、なかなか 詳しく、分かりやすく、子供の頃、正月になると、必ず家族でやっていた「百人一首かるた取り」を思い出して懐かしくなり、「今更 向学心?」なーんてものではなく ブログネタに?、頭の体操に?等と思い込んで 処分せず、以後座右の書にしてしまっている。「小倉百人一首」は 奈良時代から鎌倉時代初期までの百人の歌人の歌を 藤原定家の美意識により選び抜かれた秀歌であるが 時代が変わっても 日本人の心情が呼び起こされるような気がする。
季節は 秋。「小倉百人一首」で、季節を詠んだ歌の中では 「秋」を詠んだ歌が 最も多いという。今も昔も 秋は 日本人の心情を映す季節なのかも知れない。「秋」を詠んだ歌、昨年の秋にも 一部取り上げていたが その続きをしている。
百人一首で「秋」を詠んだ歌 その14
み吉野の 山の秋風 さ夜更けて
ふるさと寒く 衣うつなり
出典 新古今集(巻五)
歌番号
94
作者
参議雅經(さんぎまさつね)
歌意
吉野の山から秋風が吹き下ろしきて
夜も更けて この古い都であった里は
いっそう寒くなり、
折しも 砧で衣を打っている音が
寒々と聞こえてくることよ。
注釈
「み吉野」・・奈良県吉野町あたり。「み」は美称の接頭語。歌枕。
「さ夜ふけて」・・夜が更けて。「さ」は美称の接頭語。
「ふるさと」・・「ふるさと」は 単なる故郷や古い里の意味でなく、
旧都、古京の意味。
「寒く」・・「ふるさと寒く」と「寒く衣打つなり」、
両方に掛かっている。
「衣うつ」・・「砧(きぬた)打つ」と同意。
木または石の上で布を槌で打って柔らかくすること。
「なり」・・詠嘆を込めた断定または推定。
新古今集の詞書(ことばがき)によると、
「擣衣のこころ」を 詠んだ題詠とされている。
参議雅經(藤原雅經・飛鳥井雅經)
刑部卿藤原頼經の子、
蹴鞠の飛鳥井家の祖、
新古今集の選者、
歌集「飛鳥井集」がある。
参照・引用
小町谷照彦著「小倉百人一首」(文英堂)