図書館に予約(リクエスト)してから数ケ月、先日やっと順番が回って来て借りてきた 畠山健二著「本所おけら長屋(十四)」(PHP文芸文庫)を 読み終えた。
お江戸本所亀沢町にある貧乏長屋「おけら長屋」の住人、万造、松吉の「万松コンビ」を筆頭に 左官の八五郎、お里夫婦、粋な後家女お染、浪人の島田鉄斎、大家の徳兵衛、等々、個性豊かな面々が 貧しいくせにお節介で人情厚く、次々巻き起こる問題、事件、騒動を笑いと涙で体当たりし、まるく収めていくという 人気の「本所おけら長屋シリーズ」の第14弾目の作品だ。まるで江戸落語を聞いているようなテンポ良い会話、小気味良い文体、随所で笑いが堪えられなくなったり、思わず泣かされてしまう、人の優しさが心に沁みる時代小説、一気に読める作品だと思う。
(注)真夜中に読まない方がいいかも知れない。一人で ゲラゲラ笑い出したり、鼻をすすったりする爺さんは なんだか不気味、気が触れたか?と 勘違いされる恐れ有り。
畠山健二著 「本所おけら長屋(十四)」
本書には 「その壱 まつあね」、「その弐 かたまゆ」、「その参 きれかけ」、「その四 おみくじ」の 連作短篇4篇が収録されている。
「その壱 まつあね」
前作の「その四 ゆうぐれ」では 下総国印旛の松吉の実家の騒動を おけら長屋の住人達に酒場三祐のお栄等も加わって、笑いと涙で丸く収めたが、結果 松吉の義姉お律は 江戸に出てきておけら長屋の住人となっている。当篇では そのお律に絡んだ出来事、騒動に、万造、松吉等 おけら長屋の面々が出番となる物語。
お律が手伝うようになった聖庵堂に大柄な男新吉が運び込まれてきた。お律は 証文も無しで、その男に20両の大金を貸してしまうが・・・・、
品川宿の口入れ屋日吉屋のお陸、下働きの猪之吉、柴崎屋義左衛門、番頭仙太郎、破落戸音蔵、
「その弐 かたまゆ」
おけら長屋の住人、大工の八五郎の女房お里の奉公先成田屋の女中頭お多喜は、亭主竹五郎の酷い酒癖の悪さで困っている。一方で 阿波国徳島藩の藩士で島田鉄斎を師と仰ぐ若芽錦之助が訪ねてきた。剣の腕抜群の好男子だが、酒癖の悪さで切腹は免れたものの、お役目辞退、謹慎、廃嫡になった経験有り、断酒中。その若芽錦之助、貧乏旗本の三男坊黒田三十郎と称して、お忍びで おけら長屋の連中と関わり合う津軽藩の分家黒田藩藩主津軽甲斐守高宗、万造、松吉を交えて 大変なことになり・・、若芽錦之助、甲斐守高宗のキャラクターに 抱腹絶倒・・・、「わはははは、腹が痛え、助けてくれ~、死ぬ~」
黒田藩江戸家老工藤惣二郎、用人見習い田村真之介、徳島藩藩主須賀田阿波守政勝、
「その参 きれかけ」
おけら長屋の裏手の金閣長屋の住人、曲物師権三郎と女房お清の娘お菜美は 2年前に飛び出していたが 大きなお腹を抱えて戻ってきた。おけら長屋の井戸端は その話でもちきり。お節介焼きのおけら長屋の面々、放っておくことが出来ず、相手を探し出し、丸く収める方向へ 手を出し、口を出す。お菜美は涙を払った。
お染、万造、松吉が お菜美と佐久助の馴れ初めを聞き出し お糸も世話を焼く。
「ありがとう、お糸ちゃん。鼻緒は切れなかったよ」「今度は お糸ちゃんの番だね」
下駄屋三増屋安兵衛、お満、
「その四 おみくじ」
大工の八五郎と女房お里の娘お糸の出産に絡んだてんやわんやの騒動と顛末。出産間近になり、ひとつ家族のようなおけら長屋の住人達はこぞって、浮足立ち、浮かれ過ぎている。八五郎は孫の名前を考え、女達は 御包みの準備に大わらわ、魚屋の辰次、呉服屋の手代久蔵、八百屋の金太、の三人は 犬山神社のお守りに添えて 「おみくじ」を贈ったが大問題に・・・。
(商売)北東に落とし穴あり、(願望)今は叶わず、(待ち人)来たらず、(出産)難あり、身内の食あたりに気をつけよ・・・、手違いで「大凶」のおみくじだった。大事な時期にお糸が落ち込み、どうしたらよいものか思案するおけら長屋の面々。お染が お糸を救う手段に指し向けたのは 久蔵の女房お梅、
大雨の中、聖庵堂に参集した面々に お満は 逆子で母子の生死が掛かる最悪の事態であることを説明するが 直後突然近くに落雷が有り・・・。久蔵は 「そう言えば・・」と口走ると懐からくしゃくしゃになった大凶のおみくじを取り出した。「さ、最後に書いてありますよ。”光させば好転す” って」
八五郎が突然叫ぶ。お糸の亭主文七、「雷蔵・・・いい名前じゃねえですか」
(つづく)
(参照)→ PHP研究所(PHP文庫)「本所おけら長屋シリーズ」
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