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「愛は苦手」山本幸久

2010年03月10日 23時59分00秒 | 読書(小説/日本)

「愛は苦手」山本幸久(新潮社)

山本幸久作品、最新刊。

短編集、8編収録されている。
「カテイノキキ」
「買い替え妻」
「ズボンプレッサー」
「町子さんの庭」
「たこ焼き、焼けた?」
「象を数えて」
「まぼろし」
「愛は苦手」
私は、山本幸久さんの作品すべて読んでいる。
なぜなら、心を揺さぶられ、慰められ、安らぐから。
派手な事件は起こらないんだけど、読後のカタルシスはトップクラス。
「あぁ、いいものを読んだな」、と。
性悪説を信じる私であるが、この方の作品を読むと、
日本人も、まんざら捨てたものではない、と思ってしまう。

どの作品もすばらしいが、特に最後の2編は好み。
「まぼろし」は他の作家だと、どろどろした内容になるでしょうね。
山本幸久さんが処理すると、まるでおとぎ話のような雰囲気。
元気のでるエンディング。

「愛は苦手」は、もろ好み。
この造形と心理描写・・・見事!
書けそうで書けないのが、働く女性の心理。
このあたり、絶妙に巧いのは(他に)奥田英朗さんくらいでしょう。
(もちろん、女性作家だったら何人かいる)
欺されてと思って、「愛は苦手」だけでも読んでみて。
感情のうねり、読後の感慨と余韻・・・見事だから。
この作品は、人物の対比が効いていている。
ワガママな母親とけなげな娘。
娘がホントはピンク色が好きなのに、母の好みの色を買おうとするシーンに泣ける。
あと、ゲイカップル・遥とタカシの対比も巧い。
もちろん、ヒロイン・モエ姉さんと職場のお局様・琴音。
日本の文壇も、読書界も、もっと山本幸久作品を評価すべし。
(ユーモア小説、って評価しにくいのだろうか?)

【ネット上の紹介】
「アラフォー」って自分で言うのは許せるけど、他人にそう呼ばれると、なぜかイヤ。
20代はみんな私に優しくて、30代も大丈夫と思ってて。
でもなんだか、気がついたら前に進めないよ……。
高校生になった娘を持て余す彩子、
ついに一人で家を買った可憐、
ダメで強引で温かかったあの人の死を聞いた静子、
よくわからない「愛」ってものを考えてみる茂絵。
揺れる彼女たち八人の心を穏やかなユーモアに包んで描く連作集。



どれもすばらしい山本幸久作品群!


女性心理で、山本幸久さんに匹敵するのは、この方くらいか?