「ワイルドソウル」垣根涼介(新潮文庫)
おもしろい、一気読み!
上下2巻、1300枚超が短く感じられた。
ブラジルでの移住シーンから始まり、その過酷な現実が詳細に語られる。
これにより、その後の復讐劇が生きてくる。
さらに、後半は犯人、警視庁、公安、TV局、マフィアと思惑が絡み合い、展開が読めない。
その上、犯人・ケイとTVキャスター・貴子との恋愛まで重なる。
そして見事な着地、読後感の良さ。
この作品の優れてる点は、生き生きした魅力的な犯人像。
特に、陽気な犯人・ケイのキャラクター好感度は高い。
女性に弱いケイ、タカビーな貴子との掛け合いは紋切り型だけど、
これが劇画やマンガ世代にかえって受ける。(私にも受けた)
大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞、史上初3賞受賞作品。
自信を持ってオススメする。
PS1
以前「ジョーカー・ゲーム」を通勤読書に勧めたけど、これはダメ。
途中で泣けるから。
自宅では、百面相で読んでも気にする必要がない。
でも、公の場所では、誰に表情を見られるか分からない。
ニヤニヤするような内容、涙腺のゆるむ物語は避けたい。
そう言う意味で、ずっと硬い表情で読める「ジョーカー・ゲーム」は通勤読書に最適。
でも、「ワイルドソウル」の導入部は涙腺にダメージを受けるので不適、と思われる。
PS2
この作品は文庫本化されているが、2種類ある。
新潮文庫版と幻冬舎文庫版、である。
私は新潮文庫で読んだが、表紙は幻冬舎文庫の方が良い。
【ネット上の紹介】
一九六一年、衛藤一家は希望を胸にアマゾンへ渡った。
しかし、彼らがその大地に降り立った時、夢にまで見た楽園はどこにもなかった。
戦後最大級の愚政“棄民政策”。
その四十数年後、三人の男が東京にいた。
衛藤の息子ケイ、松尾、山本―彼らの周到な計画は、テレビ局記者の貴子をも巻き込み、歴史の闇に葬られた過去の扉をこじ開けようとする。
呪われた過去と訣別するため、ケイたち三人は日本国政府に宣戦布告する。
外務省襲撃、元官僚の誘拐劇、そして警察との息詰まる頭脳戦。
ケイに翻弄され、葛藤する貴子だったが、やがては事件に毅然と対峙していく。
未曾有の犯罪計画の末に、彼らがそれぞれ手にしたものとは―?
史上初の三賞受賞を果たし、各紙誌の絶賛を浴びた不朽の名作。
この作家には次の人気作品もある。
いずれ、私も読む予定。