「ハナシがちがう!」田中啓文
田中啓文さんはSF作家、パロディ作家として、印象が強い。
しかし、落語を扱った作品も本作をはじめ、何冊も上梓されていて、相当な通とうかがえる。
さて、内容は不良少年が無理やり、落語家の師匠に弟子入りさせられるところから始まる。
業界裏の人間模様が語られ、好きな方にはたまらん、でしょうね。
落語の、特に上方古典落語をネタに、物語が展開し、ミステリの謎解きまでおまけについてくる。1話で2度美味しい、といった趣向になっている。
さらに、月亭八天さんのエッセイも挿入されていて、これも面白い。
これを読んで永年の疑問が氷解した個所がある。
つまり、一人前の芸妓になったことを、なぜ「一本になった」と言うのか?
次のように書かれている。
その昔、時計のなかったころ、色町の芸者さんの花代を線香で計っていたそうです。帳場は線香場とも呼ばれ、男衆さんが線香台に線香を立て、あるいは粉のお香を並べ、それが一筋立てば、なんぼ(幾ら)というシステムであったと聞いているます。一人前の芸妓になると一本になったというのは、線香一本分の値段が取れるようになったということです。(P8)
【用語説明】ウィキペディアより
●京都・大阪などの近畿地方
芸妓を「芸妓(げいこ)」、見習を「舞妓(まいこ)」と呼ぶ。山形、石川などでもこの呼名が行われる。
●東京を中心とする関東地方
芸妓を「芸者」、見習を「半玉(はんぎょく)」・「雛妓(おしゃく)」などと呼ぶ。
【ネット上の紹介】
上方落語の大看板・笑酔亭梅寿のもとに無理やり弟子入りさせられた、金髪トサカ頭の不良少年・竜二。大酒呑みの師匠にどつかれ、けなされて、逃げ出すことばかりを考えていたが、古典落語の魅力にとりつかれてしまったのが運のツキ。ひたすらガマンの噺家修業の日々に、なぜか続発する怪事件!個性豊かな芸人たちの楽屋裏をまじえて描く笑いと涙の本格落語ミステリ。