「我が家の問題」奥田英朗
奥田英朗さん最新刊。
ユーモア小説の書き手は少ないけど、第一人者と思う。
本作は短編集で、テーマは夫婦と家族、つまり「我が家」。
我が家に起こる様々な問題、複雑な心理を解き明かしていく。
いくつか文章を紹介する。
夫婦の行き違いを会社の同僚(女性)に相談するシーン。
P28
「(前略)で、田中君はどうして欲しいわけ?」
「人生に過剰な意義など求めないで欲しい。みんな凡人なんだし」
「はは。田中君らしいね。でもね、記念日好きも、占い好きも、女子の業だよ。自己愛は女のアイデンティティ。女は自分を否定されることが何より嫌い。女性誌が細分化しているのはそのせいでしょ?少しは理解しなきゃ」
「うーん。そうかあ。自己愛かあ」
淳一の中でいろいろな糸がほどけてきた。昌美は頻繁に「自分へのご褒美」と言いたがる。あれは自己愛だったのか。
P74
「結局、男と会社の関係って、永遠の片想いなのよね」
「言えてる。一生のうち半分以上を過ごすところだもんね。そりゃあ愛されたいわよ」
P256
「とにかく、女は生活レベルが同じ人同士じゃないと付き合わないですよ。そういうチェック、女は厳しいですよ。スーパーの買い物ひとつをとっても、1人だけ高級卵とか、霜降り和牛だとかをカゴに入れてたら、それだけで、あ、この人うちらとちがうって。(後略)」
上質のユーモア小説を読むと、ホント目も心もうるおう。
【ネット上の紹介】
平成の家族小説シリーズ第2弾! 完璧すぎる妻のおかげで帰宅拒否症になった夫。両親が離婚するらしいと気づいてしまった娘。里帰りのしきたりに戸惑う新婚夫婦。誰の家にもきっとある、ささやかだけれど悩ましい6つのドラマ。