「蚤とり侍」小松重男
この著者は、アンソロジー「大江戸猫三昧」で知った。→「大江戸猫三昧」澤田瞳子/編
その時、「小松重男さん要チェックだな」、と感じた。
今回、遅ればせながら短編集として、まとめて読んでみた。
江戸風俗の知識がしっかりしていて、尚且つ、楽しめる物語で感心した。
『猫の蚤とり屋』=『密夫屋(みそかおや)』とは何か?
P7-8
猫好きの妾や後家に呼ばれて住居へ出入りしているうち、遂には淫らな遊び相手もつとめて、正当な《蚤とり仕事》のそれとは比較にならぬ報酬を受け取るようになり、瞬く間に『猫の蚤とり屋』は表看板、裏看板の『密夫屋』が本業となってしまったのである。(つまり『密夫屋』=女性客目当ての淫売夫、である)
田沼意次のセリフ
P8-9
「(前略)買う者がおるから売る者が成り立つ。その分だけ金銭が動いて江戸が繁栄するぞ。男に女を買う楽しみがあれば、女にも男を買う楽しみを与えねばならぬ。捨て置け!」
P65
「自慢高慢、莫迦のうち。わが子自慢は、もっと莫迦」
P196
旗本は自分の妻を奥と呼ぶ。目下の他人は旗本の当主を殿様、婦人を奥様、嫡男を若殿様と呼ぶが、御家人に対しては旦那様、御新造様、若旦那様である。
【おまけ】
昨年映画化もされた。
→映画「のみとり侍」公式サイト
【ネット上の紹介】
「猫の蚤とりになって無様に暮らせ!」主君の逆鱗に触れた長岡藩士・小林寛之進は、猫の蚤とり―実は“淫売夫”に身を落とす。下賎な生業と考えていた寛之進だが、次第に世に有用な、むしろ崇高な仕事だと確信する。ところが政権が変わり、蚤とり稼業が禁止に。禁令の撤廃を願い出る寛之進だが…。(表題作)江戸の浮き世を懸命に生きた愛すべき人々の物語、全六編。