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「狼の義」林新/堀川惠子

2020年03月08日 19時39分17秒 | 読書(小説/日本)
「狼の義」林新/堀川惠子

NHKエグゼクティブ・プロデューサー・林新氏が10年かけて集めた資料を基に、犬養毅を描いた作品。しかし、志し半ばで亡くなってしまう。
それを引き継いだのが、妻である堀川惠子さん。もともとノンフィクション作家で、「原爆供養塔」「死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの」「教誨師」など数々の優れた作品をものしておられる。今回は、夫の作品を「小説」の形式で引き継いだ。昨年上梓された作品だが、読むのが遅くなった。私にとって、今年のベスト、と思う。ぜひ読んで、明治、大正、昭和へと繫がる時代の空気を感じてみて。

P83
自由党員の多くは下駄で闊歩するバンカラで、政策立案などとはほとんど無縁。一方改進党は背広にネクタイ姿で、毎日、英字新聞も含め何紙にも目を通す。

P115
日本で初めての選挙は、投票率93.9パーセントという驚異的な数字を記録した。
投票用紙に候補者の名前だけでなく、役人の前で自らの住所、氏名を書き、印鑑まで押さねばならなかった。

P119
院内の廊下に用意された帽子掛けの下には、多くの議員が仕込み杖を用意した。反対派の壮士に反撃するための武器だ。

P290
「諸外国でも政権を倒す革命のようなことはできても、その後の統治となると、どこも失敗してます」(フランス革命ではロベスピエールが「恐怖政治」をし、さらにナポレオンが出てくる。ロシア革命ではスターリンが「粛清」しまくった。中国では鄧小平が舵を切ったから、何とか、経済的には繁栄した・・・文革のままだったら、どうなっただろう?・・・あのときの紅衛兵はどこに行った?)

P378
犬養の持論は軍縮だ。外交や軍事は政争の具とせず、超党派で取り組みべきだと繰り返し訴えてきた。ロンドン会議が終わる直前にも、「日本のような貧乏所帯で軍艦競争をやられてはたまらない」と新聞記者達を前に散々に語っている。

昭和6年9月18日満州事変が勃発
P389
この年、西暦の1931年をい(一)く(九)さ(三)はじまる(一)、と読む易者がいた。その予言どおり、後に15年戦争と呼ばれる昭和の戦争が幕を開ける。

P409
満州事変が勃発した時、事変を支持した新聞社は大幅に部数を伸ばし、事変を批判的に伝えた朝日新聞には不買運動が起きた。2万、3万と部数を減らす朝日が、姿勢を転じるのに時間はかからなかった。

犬養毅、5・15直前でのラジオ放送
P434
「侵略主義というようなことは、よほど今では遅ればせのことである。どこまでも、私は平和ということをもって進んでいきたい。政友会の内閣である以上は、決して外国に向かって侵略をしようなどという考えは毛頭もっていないのである」

【ネット上の紹介】
日本に芽吹いた政党政治を守らんと、強権的な藩閥政治に抗し、腐敗した利権政治を指弾、増大する軍部と対峙し続け、5・15事件で凶弾に斃れた男・犬養木堂。文字通り立憲政治に命を賭けた男を失い、政党政治は滅び、この国は焦土と果てた…。真の保守とは、リベラルとは!?戦前は「犬養の懐刀」、戦後は「吉田茂の指南役」として知られた古島一雄をもう一人の主人公とし、政界の荒野を駆け抜けた孤狼の生涯を圧倒的な筆力で描く。驚愕の事実に基づく新評伝!
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