「キンドレッド」オクテイヴィア・E・バトラー
面白かった!
おそらく、今年、翻訳小説のベスト、と思う。
「タイムスリップ」SFとしても、文学作品としても、良く出来ている。
著者は、アフリカ系米女性作家。
ヒューゴ賞を2度、ネビューラ賞を1度獲得し、現時点ではSF分野で位置の確立した唯一の黒人女性作家、と言われている。(訳者あとがき、より)
過酷な体験はデイナに憑依した読者の魂を揺すぶり、傷を残すかもしれない。くれぐれも精神に余裕のあるときに読書に臨んでほしい。(解説、より)
ちなみに、「キンドレッド・Kindred」は、「親族」のこと。
P46
「何年ですって?」
「1815年。」
(この19世紀初頭、ってのが、本作品のミソ・・・舞台はメリーランド州ボルチモア近くの農園。この後、黒人奴隷の生活が克明に描かれる)
P168
(ロビンソン)クルーソーは結局のところ、船が難破した時奴隷貿易の航海中だったのだ。
P229
この小説(「風と共に去りぬ」)の、優しく情愛ゆたかな奴隷制度下の幸せな黒ん坊(ニガー)の図には我慢できなかった。
P286
戦闘的な1960年代だったら、軽蔑される女だろう。頭にスカーフを巻いた屋内の黒ん坊、アンクル・トムの女性版、抵抗する力をすっかり失った脅えた女、来世のことに劣らず北部の自由についてほとんど知らない女。
P466
教育は奴隷を畑の労働の役に立たなくする。メソジストの牧師は教育は彼らを反抗的にし、神が定めたよりももっと多くを求めるようにしてしまう、と言った。
【チェックポイント】
①メリーランド歴史協会
Maryland Center for History and Culture (mdhistory.org)
②ヴァージニア、マウント・バーノン・・・ジョージ・ワシントンのプランテーションで、昔の状態を保存し、常時公開している、そう。
Official website of Mount Vernon
マウントバーノン - Wikipedia
③「農園主の館」見学ツアー
【ネット上の紹介】
二十六歳の誕生日をむかえた日、黒人女性のディナは、突然十九世紀初頭の奴隷制下の地へタイムスリップし、ルーファスという白人少年の命を救う。ルーファスは、黒人奴隷を多く抱えた農園主の息子であった。一世紀の時を超えた彼の元への、重度なるタイムスリップの理由が、次第に明らかになってゆく。人間の本質を問う、アフリカ系アメリカ人SF作家の金字塔。