「アメリカンビレッジの夜」アケミ・ジョンソン/真田由美子/訳
沖縄に取材したノンフィクション。
11人の女性たちが登場する。
『彼女たちの言葉から、複雑で矛盾に満ちた沖縄の歴史と現実が浮かび上がる』、とある。ジョン・ダワー氏も、『類いまれな語り手が、帝国の基地の町に生きるとはどういうことかを鮮やかに描き出す』、と褒めている。
P23
米兵が沖縄で女性をレイプするとき、沖縄は純真無垢な少女となる――悪漢アメリカによって連れ去られ、殴られ、組み敷かれ、犯される少女。日本政府はその悪漢を招き入れ、暴行を手助けしたポン引きだ。
P62
1970年、米兵が起こした交通事故が発端となったコザ暴動のさなか、数多くの沖縄人が米兵を殴り、車に火をつけたが、群衆は黒人を標的にしなかった。
P78
まもなく沖縄は在外米軍基地のなかでも選り抜きの赴任地となった。「その魅力と快適さから、兵士たちは競って沖縄勤務を希望する」と、ニューヨーク・タイムズ」紙は報じた。(競って希望した結果がこれか・・・)
P195
鈴代の考えでは、軍事訓練と性暴力は不可分の関係にある。「他者を差別し、自分の力を行使して意に沿わせる意識がなければ、兵士としてやっていけないからです」。
P232
米軍は公には買春禁止の立場をとるようになったかもしれないが、ときおり本音が露呈する。1995年の女子小学生強姦事件後、米太平洋司令官のリチャード・マッキー海軍大将は記者の前で事件について、「犯行に使用した車を借りる金があれば、女(売春婦)を買えたのに。三人はばかだ」と発言した。三人で売春婦をひとり雇えばすむことだからだ。
P251
ふたつの国と文化のなかで成長した作家パール・バックは、「アメラジン」という用語を作り、みずから混合人種の子供たちを重ね合わせ、その支援に情熱をそそいだ。
P278
普天間飛行場は「世界一危険な米軍施設」と言われてきた。(オスプレイは、その墜落事故の多さから「未亡人製造機(ウィドウメーカー)」の異名をとる)
P336
よく言われるジョークに、首相(安倍晋三)はドナルド・トランプの「愛犬」というものがあった。主人の足元でよだれを垂らし、何でも従う、と。
【参考図書】
「敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人」(上)ジョン・ダワー
「敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人」(下)ジョン・ダワー
「沖縄アンダーグラウンド」藤井誠二
「裸足で逃げる」上間陽子
【ネット上の紹介】
「対話はいつもあまりに単純化され、人々は口をつぐみ黙りこむ。矛盾をもっと認識することで人々は話しやすくなる」1972年に日本へ復帰するまでの27年間、アメリカに占領・統治され、その後も基地が置かれた沖縄は、戦後70年以上、基地との共生を強いられてきた。米兵による犯罪や事故、自然破壊もあとをたたない。2016年に20歳の女性が米軍関係者により暴行を受けて殺害されると、抗議デモは過去20年を通じて最大規模となった。米軍基地をめぐって対立する日米両政府と沖縄県。普天間基地の移設問題も混迷をきわめている。だが、沖縄の基地をめぐる問題を「賛成か反対か」と二極化することでこぼれ落ちてしまう現実がある。そう感じた日系四世の著者は、沖縄に生きるあらゆる立場の女性――沖縄戦で学徒看護隊に動員された女性、基地で働く女性、米兵との恋愛結婚を夢見る女性、アイデンティティに悩む「アメラジアン」、基地反対運動の活動家ら――の話を聞き歩いた。彼女たちの言葉から、複雑で矛盾に満ちた沖縄の歴史と現実が浮かび上がる。------------------------類いまれな語り手が、帝国の基地の町に生きるとはどういうことかを鮮やかに描き出すジョン・ダワー(『敗北を抱きしめて』著者)推薦------------------------【著者】アケミ・ジョンソン(Akemi Johnson)ブラウン大学東アジア研究学部卒、アイオワ大学大学院創作科修了。フルブライト奨学金を得て日本に留学中、沖縄に滞在したほか、京都アメリカ大学コンソーシアムでも学んだ。現在は沖縄について各紙誌に寄稿するほか、ジョージ・ワシントン大学、ハワイ大学などで教鞭をとる。初の著書となる本書でウィリアム・サローヤン国際賞にノミネートされた。【訳者】真田由美子(さなだ・ゆみこ)翻訳家。ノンフィクションの主な訳書にカーギル『聖書の成り立ちを語る都市』(白水社)、リンジー『まっくらやみで見えたもの』、ウィルソン『キッチンの歴史』(以上、河出書房新社)、コーエン『あなたはあなたのままでいい』(イースト・プレス)ほか、小説ではピアースの短編集『小型哺乳類館』(早川書房)がある。
【目次】
リナ
イヴ
アシュリー
サチコ
アリサ
スズヨ
デイジー
ミヨ
エミ
チエ
アイ