「悩む人」高橋秀実
読売新聞に連載された「悩みの相談」回答をまとめた単行本。
回答集でありながら、半分はエッセイを兼ねている。
P5
『源氏物語』には「悩む」「悩み」「悩める」「悩まし」「悩ましげ」などの言葉がおびただしく出てくる。
P9
『源氏物語』でも、鼻がデカく醜悪で歌のセンスもなかった末摘花を描く章には「悩む」という言葉が出てこない。末摘花は悩まず、悩まない彼女はいつの間にか消えていく。(中略)
光源氏は女性たちの「悩み」にこまめに答えている。答えることで物語は展開していくわけで象徴的なのは彼が紫の上を見舞う次のシーンだ。
「かく、悩ましくてなむ」(以下、省略)
『悩む力』(姜尚中)について
P106-108
本文は「生きることの意味」「人生の意味」「死ぬことの意味」「愛することの意味」を考えて悩んで何が悪いのでしょうか、という具合に話が展開していく。(中略)私からすると「その意味に意味があるのか」と思ってしまう。(中略)姜さんが悩んだという「いきる」は、もともと「いき(息)」に由来する。こうして笑って息を吐き出すことで、その意味も感じ取れるというのが私の表面上の解釈である。
P139
おそらく悪口は二酸化炭素のようなもので、吐き出さないと人間は生きていけないのです。(中略)私はそれこそ二酸化炭素を吸収する植物のように、自分の栄養分にしました。
そう、悪口はこやしだと思って下さい。こやしは臭いかもしれませんが、こやしがなければ美しい花も咲きません。
【感想】
以前、同著者の「定年入門」を読んで面白かったので、本書も読んでみた。
本書も、けっこう評判になっていて人気のようだ。(先日読んだ「人生のほんとう」(池田晶子)より面白く感じた)
ただ、悩みの相談・回答集としては、「家族の悩みにおこたえしましょう」(信田さよ子)に及ばない。私の知ってる限りでは、信田さよ子さんの回答集がベスト、と思う。
【リンク】
【蛇足】
悩みの9割くらいまで、お金で解決できる、と思う。
お金で解決できないものほど根が深い。
「能力」についての悩みも、ある程度お金で解決できるが、そこそこの段階に達すると、あとは「才能」や「運」の問題なってくる。
お金での解決が最も困難なのが、「人間関係」「性格」の悩み、と思う。
だから、悩みの相談もその手のものが多い。
相手があって、自分の意のままにならない、と。
あるいは、自分を変えようとするが変えられない、とか。
それにどう回答するかが、腕の見せどころかと思う。
(解決しなくても、質問者や読み手を納得、あるいは感心させたら良いのだ)
【ネット上の紹介】
読売新聞「人生案内」掲載!ヒデミネさんの回答が心のヒダにやさしく語りかけます。考えるヒント満載、新時代の哲学入門。
まえがき―なやましげにこそ見ゆれ
時のわれめ
「友達」は裏切る
人間じゃないもの
しようがないじゃん
機嫌を知るべし
結婚という最高学府
人柄より顔
無名の「有名人」
哲学を拝む
「らし」「かも」の呪い
道徳は不景気
貧乏神の正体
有意義な誤差
なつかしく、なまめかしく
おやじはニーチェ
思い上がってビッグバン
身勝手な「死」
さかしき女
悩みの「てにをは」
時のわれめ
「友達」は裏切る
人間じゃないもの
しようがないじゃん
機嫌を知るべし
結婚という最高学府
人柄より顔
無名の「有名人」
哲学を拝む
「らし」「かも」の呪い
道徳は不景気
貧乏神の正体
有意義な誤差
なつかしく、なまめかしく
おやじはニーチェ
思い上がってビッグバン
身勝手な「死」
さかしき女
悩みの「てにをは」