「これは経費で落ちません! 」①―⑧青木祐子
読みやすくて面白い「お仕事小説」、オフィス人間模様が描かれる。
①から⑧まで再読した。
④から美華が(本格的に)登場し作品魅力度が増す。(③は挨拶だけ)
沙名子は基本、トラブルを避けようとするので、思わぬ方向へ物語が向かう、ってのがない。その点、美華は暴走する。真面目なだけに、傍から見ておかしい。
いまや、麻吹美華抜きで、このシリーズは考えられない・・・ツイン・リードシステム。
②P11
「ウサギを追うなってのはなんですか?森若さん」
(中略)
「雑念に惑わされるなって意味。(後略)」
(中略)
「昔の映画にあったのよ」
沙名子の好きなハリウッド映画、『パシフィック・リム』の中にあった台詞である。(でも、もともとは『アリス』だと思うけど・・・映画「マトリックス」でも「白ウサギについて行け(Follow the white rabbit.)」と出てくるし)
「昔の映画にあったのよ」
沙名子の好きなハリウッド映画、『パシフィック・リム』の中にあった台詞である。(でも、もともとは『アリス』だと思うけど・・・映画「マトリックス」でも「白ウサギについて行け(Follow the white rabbit.)」と出てくるし)
③ファクスはいまや遺物としてスミソニアン博物館にあるという。
③P239
「おはようございます。みなさん」
(中略)
「(前略)仕事において、何より人生において、常に正しくありたいと思っています」
美華がそう言ったとき、沙名子がぐっと右手を握りしめるのが見えた。
なんかスイッチ入った。(麻吹美華登場!)
④P25
「――ああ、『新感染』、ゾンビ映画ですよね。あれまだ観てないんです。いいですか」
「なかなかいいです。わたしは劇場で観ました」(続編もおもしろかった)
④P28
美華は何を考えているのだ。言いたくても言わないほうがいい言葉というものはあるではないか。たとえ、みんなが考えていることであっても。
入ったばかりの会社で、全方位にケンカを売ってどうするのだ。
無理にフレンドリーになる必要はないが、信頼をなくしてはならない。嫌われるのは、親しくなりすぎるのと同じくらい始末が悪い。
④P207
性格に癖があっても仕事のできる人間のほうがいい。
④P226
「どうして決定的な失態をすると?」
「有本さんは頭が悪いからです。アンフェアです。あんなやり方が、社会に通じるわけがないです。彼女はどこかでつまずくはずです。そうじゃなきゃおかしい」
(中略)
あちこちでつまずいているのは美華のほうではないか。マリナと美華、頭がいいのはどっちだ。正しければ勝つわけではないのなら、正しさに何の意味がある。
③P239
「おはようございます。みなさん」
(中略)
「(前略)仕事において、何より人生において、常に正しくありたいと思っています」
美華がそう言ったとき、沙名子がぐっと右手を握りしめるのが見えた。
なんかスイッチ入った。(麻吹美華登場!)
④P25
「――ああ、『新感染』、ゾンビ映画ですよね。あれまだ観てないんです。いいですか」
「なかなかいいです。わたしは劇場で観ました」(続編もおもしろかった)
④P28
美華は何を考えているのだ。言いたくても言わないほうがいい言葉というものはあるではないか。たとえ、みんなが考えていることであっても。
入ったばかりの会社で、全方位にケンカを売ってどうするのだ。
無理にフレンドリーになる必要はないが、信頼をなくしてはならない。嫌われるのは、親しくなりすぎるのと同じくらい始末が悪い。
④P207
性格に癖があっても仕事のできる人間のほうがいい。
④P226
「どうして決定的な失態をすると?」
「有本さんは頭が悪いからです。アンフェアです。あんなやり方が、社会に通じるわけがないです。彼女はどこかでつまずくはずです。そうじゃなきゃおかしい」
(中略)
あちこちでつまずいているのは美華のほうではないか。マリナと美華、頭がいいのはどっちだ。正しければ勝つわけではないのなら、正しさに何の意味がある。
⑤P58
「静岡に一泊――ですね」
沙名子は出張計画書を数秒眺めた。
透明な水晶が燃えあがる。(山崎は「共感覚」の持ち主なのか?「共感覚」は感情や言葉を色で認識するという・・・沙名子は山崎にとって「透明な水晶」なのだ。だからかまわずにいられない。ちなみにこの能力は、「 臨床真理」「天空の犬」でも取り上げられている)
⑤P60
昔は人の精神というものは年齢とともに成熟していくと思っていたが、実は生まれたときが完璧で、少しずつ欠けていくのかもしれないと思う。(歳をとって精神的に成長し、穏やかになるなら誰も苦労しない・・・自身のクライミングに関して言うと、年齢とともにプライドだけが高くなり、実力は低くなる、悲涙)
⑤P106
――大人の友情にはメンテナンスが必要です。
⑤P177
「(前略)いくら性格が良くたって、モテるブスなんてこの世に存在しないっつーの!」
⑤P237
「楕円のボールだ。自分だけならどうにでもなるが、他人はわからん」
勇太郎はつぶやいた。
「そのとおりです。そして他者のいない社会はありません」
沙名子は言った。(中略)
「――いえ、その考えは間違っています。過度な期待はすべきではないですが、人間関係が成り立っているのは最低限のコンセンサス、自分にも相手にも良識があるという前提があってのことです」
口をつっこんできたのは美華である。
(中略)
「こっちが正しいと思ってたのが、相手にとって正しくない場合もありますよ。そういう場合はどうすればいいんですか?」
真夕が割って入った。(経理の面々の性格と考えがでるシーン)
⑥P47
彼氏ができたからといって沙名子自身は変わらない。すりあわせが必要なだけだ。スマホに新しいアプリを入れたようなものである。ちょっと面倒なアプリだが、そこそこ役立つし楽しいので使うことにする。(森若さんのキャラが良く出ているモノローグだ)
⑥P257
美華はおそらく普通に生活していたら接点はない、同じクラスにいても友達にならないタイプだが、今は仲良くなっている。(接点のない人と出会い話をする、って良いことと思う・・・無理すると疲れるので、まぁ、ほどほどに・・・)
⑦P33
「(前略)――結婚、出産することは会社への迷惑、わたしの悪いところであるということですか」
(中略)
仕事とは幸せになるためにするもので、幸せを阻害するものではないはずでる。誰にでもある人生の転機を迷惑と責められるのなら、真面目に働くのがバカバカしくなる。
⑦P63
会社とは労働分の報酬を引き出すATMであって、私生活に入ってこられたら迷惑なのだ――
⑦P105
自分がいないとまわらないと思っているのは本人だけだ。
⑦P160
美しい女性だと思った。憎しみと優しさが混在して、不思議な迫力がある。愛した男との別れを決意すると、女性はこういう顔になるのか。
機嫌がいいと思ったのは間違いで、決意が固まって気持ちが高揚しているのかもしれない。離婚ハイ。そんな言葉があるかどうか知らないが。
機嫌がいいと思ったのは間違いで、決意が固まって気持ちが高揚しているのかもしれない。離婚ハイ。そんな言葉があるかどうか知らないが。
鎌本の結婚観
⑦P183
「森若は出世しそうだし貯金ありそうだろ。土下座して頼んできたら結婚してやらんでもない。ただし仕事を辞めることは許さない。給料は俺が没収で、金の管理は俺の母親。家事育児は全部やること。夕食のおかずは三品以上。そうでもなきゃ結婚に男のメリットないだろ」(さすが嫌われキャラ屈指の鎌本である。どこから突っ込んでいいのか分からないぐらいの発言。山崎さん曰く、「欠損している」)
⑧P127
「(前略)なんで彼女ってそういう手間とワンセットなんですかね」
(中略)
世の中には一定数、人間関係の手間を面倒と変換する人間がいるようである。
⑧P165
「そういう時期ってないですか。(中略)過去の決断は正しかったのか確認したくなるときが。確認したからってどうにかなるものでもないのに」
⑧「入力ミスはないです。変動給与がこれでよかったのかなと思って。(後略)」(給与計算の重要ポイントは変動項目の入力・・・そもそもこの言葉自体がtechnical termなので、知る人は少ないように思う)
⑧P210
美華は相手への好き嫌いや立場など考えず、正しいと思ったことを正しいと言う人間である。
⑧P212
「――玉村志保さんですか」
美華が言った。
沙名子は驚かなかった。うっすらとそうではないかと思っていた。
この件の腑に落ちなさ、ざらりとした嫌な感触は、志保に対して感じるものと同じである。
P216
不必要に喧嘩腰になることはできるのに、友好的に人に何かを尋ねたり報告したりすることはできない。雑談が嫌いなくせに口が軽い。このあたりは矛盾しないものらしい。真夕は志保の反対で、お喋りで雑談好きだが、大事なことは喋らない。(ここだと思う。信用されるかどうかの要だ。志保は鎌本とならんで、シリーズ屈指の嫌われキャラ。志保の場合は、性格が悪いと言うより、コミュ力がなくて周りが迷惑、ってのが大きい)
【参考リンク】
「これは経費で落ちません! 」①―⑥青木祐子
「これは経費で落ちません」(7)青木祐子
「これは経費で落ちません」(8)青木祐子