「子育て飴 江戸菓子舗照月堂」篠綾子
シリーズ8作目。
幽霊子育飴の話・・・これがタイトルの由来
P175
「すこうし昔のことや。あんたがさっき行ったみなとやはんに、若い女の客がやって来て、一文銭で水飴を買うていった。次の日も次の日も、一文銭で水飴を買うていく。それが六日間続いたのや。そして、七日目。女が差し出したのは銭やのうで、木の葉やった。これはいろいろ言い伝えがあって、着物の切れ端やったとか、話によって違うんやけど、とにかく銭を払ったのは六日の間や。これが意味するところは分かるか」
「さあ」
安吉は首をかしげた。
「六文銭や」
(中略)
「そうや。店の主人がおかしい思うて、女客の後をつけてみたら、墓場にたどり着いた。そこには赤ん坊がおって、その傍らには母親の亡骸があったのや。母親の幽霊は子供のために、毎晩、水飴を買いに来てはったちゅうお話や」(なお、この飴屋さんは、「450年以上続く日本一歴史ある飴屋」として、今も営業している)
【みなとや幽霊子育飴本舗】
P225
「生姜も茗荷も同じ頃に、海を伝ってこの国に入ってきたんどすけど、その時、香りの強い方を『兄の香(せのか)』とし、弱い方を『妹の香(めのか)』と呼んだのやそうどす。兄の香がなまって生姜、妹の香がなまって茗荷となったと言われてますのや」
【感想】
江戸と京都、2都市にまたがって展開する。
京都編では、ヒロインは登場しないが、それでもけっこう面白い。
安吉と長門のやりとりが楽しめる。
【ネット上の紹介】
梅香る頃、照月堂では、これまで注文を受けて作っていた煉り切りを店頭でも売り出した。これも、幕府の有力者が贔屓にしてくれるようになったおかげと、主・久兵衛や番頭の太助は感謝しきりである。忙しくなった厨房では、弟弟子を迎えたなつめが饅頭作りに挑んでいた。そんなある日、ちょうど留守にしていた隠居の市兵衛を「旦那さん」と呼ぶ女が訪ねてきた。どうもちょっとわけありらしい。店の面々は、市兵衛とその女の仲を疑って困惑するが…。照月堂と、菓子職人をめざす娘なつめの物語、シリーズ第八作。