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「神よ憐れみたまえ」小池真理子

2021年10月11日 07時49分23秒 | 読書(小説/日本)

「神よ憐れみたまえ」小池真理子

書き下ろし長編。
昭和38年11月から、長い物語が動き出す。
殺人事件が起きるが、犯人が誰か?より、心理描写、人間関係が重要。
ヒロインの幼少から晩年まで、濃厚に描かれる。

P246
百々子には少女らしからぬ強靱さがあった。しかもそれは、ただの勝気というのではない。恵まれた家庭の令嬢に多く見られる自己本位的な強さ、というのでもない。それは、前へ前へと生き抜いていくための底力、生命力そのものと言えた。

P429
「あんたの言い訳が穴だらけだってこと、わかってるんだからね」

P558
メンゲンベルグ指揮によるバッハ『マタイ受難曲』。1939年にアムステルダムで上演されたというレコードを恭しくプレーヤーにセットしながら、父は怪談でも始めるかのように、「よく聴いてごらん」とひそひそした言い方で私に言った。「すすり泣きの声が聞こえてくるからね」(中略)
これ、なんていう曲?
父は、かけがえのない大切な言葉を口にする時のように、ひと呼吸おいてから答えた。
『神よ憐れみたまえ』と。

【ネット上の紹介】
昭和38年11月、三井三池炭鉱の爆発と国鉄の事故が同じ日に発生し、「魔の土曜日」と言われた夜、12歳の黒沢百々子は何者かに両親を惨殺された。母ゆずりの美貌で、音楽家をめざす彼女の行く手に事件が重く立ちはだかる。黒く歪んだ悪夢、移ろいゆく歳月のなかでそれぞれの運命の歯車が交錯し、動き出す…。10年の歳月をかけて紡がれた別離と再生。著者畢生の書下ろし長篇小説。

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