今回の画は、SHC創立10周年記念展示会に出品したので、多くの方が目にされていると思う。けれども、画の中に仕込んだ2、3のいたずらに気がついた方は意外に少なかった。
10/16バスは紅葉がボチボチ始まった甲斐路を走り信濃路へ。野辺山を経て川上村に入った。回りはレタス畑で埋め尽くされ、収穫の順番を待っていた。畑を突っ切った山裾に今日の宿「岩根山荘」がある。一旦、部屋に荷物を置き、もう一度準備をし直して散策に向かった。ここ金峰山の麓、廻り目平は花崗岩が所々に露出していて、変化に富んだ道が多くある。まず屋根岩に向かう。最初は苦も無く高度を稼ぐが上るにしたがって、梯子や岩の狭間を通るヤバイ所が増えてくる。屋根岩の上に立つには、チョッとした勇気が要る。飛び越えるには広過ぎるし、歩いて渡ろうとすると花崗岩が風化して細かくなった砂利に乗ってしまい滑り易い。木の枝を頼りに、なんとかそこを横切れば大きな岩の頂部に出る。恐る恐る前へ進むと廻り目平が真下に広がっていた。松の緑の中に落葉松やブナ、ナラの黄葉が割り込みいいバランスを保っている。自然の妙技に拍手を送りたい気分だ。右下に目を転ずれば、居ました、居ました。クライマーが岩にへばり付いて、少しずつ上を目指している。眺めを十二分に楽しみ、これから行く先を確かめ、来た道を最大限の注意を払って渡り返した。
小さな沢を横切り、回り込むようにして「かもしか遊歩道」に入った。切り立つ岩をトラバースするように、その道は続いている。それぞれ「仏岩」「最高ルーフ」「おとの様」「おひめ様」と名前が付けられているようだが、それらの岩の裾を歩いているらしいので、大きさは見当がつかない。岩をよじ登り、またある時は岩を削った廊下状の道を、体を擦りながらトラバースして行った。Nさんが「これじゃぁ『かもしか遊歩道』じゃぁなくて『かもしかの遊歩道』だよ」と嘆いた。これ、いただき。画の題名は「かもしか〈の〉遊歩道」にした。これが、ひとつ目。ふたつ目は、画の右側、岩の上に、カモシカを入れたことだ。細い線で彫ってあるので判り難いが、カモシカがSHCの行列を、じーっと見下ろしている。
以前からやってみたかったことにも挑戦した。同じ版で紅葉(秋)と新緑(春)を摺った。色を変えるだけで雰囲気がガラッと変わってしまうことを確かめることができ、快感だった。会友の中に、紅葉の岩の中の草が緑では、おかしい。と言ってくれる方が居られました。岩に生えている羊歯とか草類は常緑だと思うのですが。画としてのバランスをとるか、現実をとるか、皆さんなら、どうされますか?
尚、この画は額装したまま、差し上げます。どなたか納屋でもセカンドハウスでも飾っていただける方が居られましたらお申し出ください。
(2009年10月、IK記)
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金峰山稜線を行く(2004年10月17日)
瑞牆山を望む
【2024年10月記】
この画の基になった2004年10月の金峰山には、珍しく私は同行していない。夏に骨折した足親指が、まだ山を歩けるまでには快癒していなかったためだろう。だから、廻り目平「カモシカ遊歩道」がどんな道で、どんな紅葉が見られたのか分からないが、同行者の「印刷の案内図を見て、幼児連れ親子の散策路を予想し、明日の足慣らしと考えたが道は厳しかった。灰色の花崗岩、清流と唐沢の滝、もみじに感嘆した。」という感想を見ると、なかなかスリルのある山道だったようだ。岩崖と紅葉という題材と思しき写真を手元のストックに探したが、ついぞ見つからなかった。
IK氏の試みた、もみじの刷り色を変えた画を並べて見るのは面白い。葉のそれぞれの色での濃淡も良いなと思った。
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