7月14日付の全国紙に いわゆる公家の家系出身の国際政治学者の方が亡くなられたという記事が出ている。
その名前を見たとき ああ、 あの人のお父さんだと思った。
その公家の家系の国際政治学者の息子さん(Pさん)と大学のゼミでコンビを組んで発表したことがある。
何を発表したのかは忘れてしまった。
発表の準備のためにPさんと大学の図書館で話し合いをした。
ある程度 話し合いが終わるとPさんは僕に言った。
「今日はLSOというオーケストラのコンサートに行くから ちょっと早いけれどこれで失礼するよ」と。
「そうですか、LSOは何を演奏するんですか」と僕は言った。
「マーラーの交響曲第5番だよ」とPさんは言った。
「Pさん、マーラーの交響曲第5番は聴いたことありますか?」と僕はPさんに言った。
「聴いたことないよ。だから 今日 聴きに行くんだよ」とPさんは言った。
そのPさんの言葉は当時の僕にとってちょっとした驚きだった。
当時の日本でLSOのレベルのオーケストラが来日してマーラーの5番をやる機会ってそんなにあるものではない。
入場料も学生にとってはかなりの額になる。
僕なら もし 知らない曲だったら レコードを聴いて絶対に予習してから行く。
でないと せっかくの機会がもったいない と思うからだ。
だから、「聴いたことないよ だから 今日 聴きに行くんだよ」というPさんの言葉は僕にとって驚きでもあり ちょっとしたカルチャーショックでもあった。
「コンサート 楽しんできてくださいね」と僕はPさんに言った。
「ありがとう 今日は 感動の世界に浸ってくるよ」と言ってPさんは去っていった。
その姿を見送ったあと 僕は思った。
やはり、この人は育ちが僕とは違うと。
でも、「マーラーの5番 聴いたことないから 今日 聴きに行く 感動の世界に浸ってくる」
少しも身構えたところのないPさんのその言葉に僕は 教えられる気がした。
音楽を聴くのに 何も身構える必要はないのだと。
それから、僕は オーケストラの音楽は 定期公演を中心に聴くことが多くなった。
どのオーケストラも定期公演だといろんな曲をやるから いちいち 曲をあらかじめレコードで聴くというようなノルマを自分に課していると逆にコンサートから足が遠のいてしまう。
聴いたことない曲はコンサートで初めて聴けばいいんだ、何も身構えることはない。
そういう姿勢を 僕はその時のPさんの言葉と態度から学んだ。
もちろんPさんと僕は卒業後はまったく音信がなく そもそもPさんは僕との間にそんな言葉のやりとりがあったことも全く覚えておられないと思う。
でも 僕にとってはあの時のPさんから大きなことを学んだなと思う。
自然体でいることの大切さとでもいうのだろうか。それを学んだような気がする。
■長崎の鐘
藤山一郎さんの「長崎の鐘」をカラオケDAMの音源で歌いICレコーダーで簡易に録音したものをアップロードします。
聴いていただければ幸いです。
古関裕而さんの作曲です。
「なぐさめ励まし長崎の」と歌詞にあるように なぐさめと励ましの歌だと思います。
↓「長崎の鐘」をカラオケDAMの音源で歌いICレコーダーで録音しました。