道しるべの向こう

ありふれた人生 
もう何も考えまい 
君が欲しかったものも 
僕が欲しかったものも 
生きていくことの愚かささえも…

エピソードlast…そんな日々

2020-07-25 23:28:00 | 想い出

♪…

ジュースを飲み干すと
あの娘は笑った

目深にかぶった麦わら帽子の上を
透明な風が走ってた

いつのことだったか
ずいぶんと昔の出逢い

それでも
心の片隅で

いつも静かに
正座して…





波が寄せてくると
あの娘は笑った

小さくなった波頭を
一つ二つ飛び越えて

夏の終わりの午後
忘れてしまったひとコマ

それでも
あの日の夕焼けは

僕の肩に
降りかかる…





何を求めて
いたのだろう

いつも遠く
見つめて

僕には見えない明日を
彷徨っていたのかもしれない

きっとまたいつか
逢える

きっとまたいつか
逢える

受話器の向こうであの子の声が
微かに震えて遠くなる…

♪…






もう
40年以上も前に作った
オリジナルの歌

なのにまだ
歌詞もメロディも覚えてるなんて…

幾つになっても
センチメンタルな
愚かなジジイらしい…








遠いあの日…

結婚式を
目の前の1ヶ月後に控えてるのに
かかってきたラブコール

どこで調べたのか
わかるはずもない
遠く離れた僕の住むコーポという名ばかりの
アパートの共同電話のコールオン

思ってもみなくて…

アパートの住人の誰かに
○○さん電話ですよ〜と呼ばれて
急いで駆け込み
受話器を耳に当てると…


逢いたい…


なぜだか
涙が出るほどの懐かしい声
耳にすることに…

22歳になった秋
4年ぶりに
そんな声を聞くことになるなんて…




彼女にとって
それほどまでに
僕は大切な存在だったのか?

そんなことすらつゆ知らず
遊び呆けていた時間
虚しすぎた学生時代

だから?
彼女の声を聞いて
僕の想いも揺れ…


すぐに帰っていた
遠く離れた郷里
彼女に逢うため…

約束の喫茶店で
うつむいた彼女が待っていた

いまでもハッキリ覚えてる





それから
波乱万丈の2週間

語ることが出来ないほど
嵐が通り過ぎたような…

そんな2週間…

親兄弟家族をはじめ
たくさんの人たちに
迷惑をかけながら…



結局
僕たちの駆け落ちの計画は
あえなく失敗に終わったと…

稚拙すぎた
何の力もなかった…



そして2週間後
彼女は予定どおり結婚式を挙げ
遠くの地へ嫁いで行った

僕の知らない
誰かの元へ…


絶望に打ちひしがれた僕は
どん底から這い上がろうと
薬を飲み続ける日々に…






あれからやがて
40年以上の月日が経ち…

紅顔の美少年だった僕は
すっかりジジイになっちまった

透き通るような美少女の彼女も
とっくにババアになってるだろうか?

もう一度逢いたくもあり
逢うのは怖すぎる想い…



右往左往してた40年以上も前の僕は
みっともなかったかもしれないけど…

昔を忘れられない今のジジイの方が
よっぽどみっともないのかもしれない



そんな日々…

勘違いの…






若い頃は
みんな弾けてるさ…

だから
逢わないことにするさ…

エピソード⑥…見えないヒビ

2019-06-27 17:15:00 | 想い出
 
 
高2の秋…
 
長く伸ばし始めた僕の髪は
肩まで届くほどになってた
 
少し前に流行ってた誰かの歌に
髪が肩まで伸びたら結婚しようよ
そんなのがあって…
 
純粋というかオクテの僕は
○○ちゃんとの結婚みたいのを
頭の中でボンヤリと思い浮かべていて…
 
それだけで幸せだった
 
 
○○ちゃんも僕にシンクロするように?
髪を伸ばし始め…
 
もともと生まれつきの茶髪系で
ストレートの長いロングヘアーは
ますます○○ちゃんを魅力的に見せ…
 
そんな○○ちゃんと並んで歩きながら
みんなもこんな女の子と付き合いたいんだろうなと
半ば優越感に浸る想いを密かに感じていた
 
 
 
 
 
 
そんな想いとは別に
別に○○ちゃんじゃなくても
もっと可愛い子がいるんじゃないかと…
 
現に
肉感的な彼女以外にも
下級生とか何人かからのアプローチが…
 
 
それは○○ちゃんにも同じことが言え
ひょっとして僕以外のほかの誰かから
アプローチがあったのかもしれない
 
僕は全く知らないけど…
 
 
いま思えば
たぶんあったんだろうなと…
 
それでも
そんなことはおクビにも出さず
こんな僕と…
 
僕も肉感的な彼女からのアプローチなど
○○ちゃんには打ち明けることはなかったけど
ひょっとしたら
気づかれていたのかもしれない
 
なんとなくそんな気がする
 
というのも…
 
 
 
 
 
 
 
 
秋になって開催された
恒例の学校の文化祭
 
写真部だった僕は
2度目のデートで撮影した
○○ちゃんのポートレートを作品として出品した
 
憂いのある横顔の彼女が
想いに耽って遠くを見つめてる
そんな…
 
写真部の先輩からは
ポートレート撮るの上手いねと褒められたけど
それはたぶん撮影技術が上手いんじゃなくて
単にモデルが良かっただけだと
僕にはわかっていた
 
 
その文化祭で
僕は友達に誘われるまま
2つのフォークグループで
ステージに立つことになった
 
別にギターが上手いわけでもないし
歌が得意なわけでもなかったが
女の子みたいな長い髪の見た目が
いかにも音楽やってますよという感じで
調子に乗っていたから…?
 
 
同級生の中には
すでに地元では名を馳せた
ラジオ番組にも出演していたバンドがいて
彼らも同じ文化祭のステージに立った
ウッドベースとバンジョーとギターで…
 
たしかロックというか
エレキは許可がおりなくて…
 
都会の学校と違って
田舎ではまだまだそこまで…
 
(うるさいからか?)
 
 
一度そのバンドの
カーリーヘアの友人の家を訪れた時
彼の家には練習専用の部屋みたいのがあって
プロまがいのPAなどの装置が揃ってたのに驚いた
 
(いわゆる金持ちの坊ちゃん?的な…)
(コッチはギターと首にかけたハーモニカだけ…)
 
歴然とした環境の差に驚くとともに
フォークシンガーになりたいという
僕の甘い夢を簡単に打ち砕くことになった
 
プロになるヤツって
こんな感じなんだろうなと…
 
まぁ…
才能も技術もないのに
なれるとは思ってなかったけど…
 
 
 
 
 
それでも
そんな友人に誘われ
一度だけ某レコード店の2階の
ミニコンサートホールでのイベントにソロで出演し
オリジナル曲を数曲披露したことがあった
 
もう
かなり昔のことなので
詳しい経緯などは忘れてしまったが
クリスマス間近の日曜午後のミニコンサート
 
覚えてるのは
○○ちゃんに打ち明けてなかったそのコンサートに
どうして知ったのか
うす暗い客席の片隅に彼女の姿を見かけたこと
 
ステージを終えて
友人たちと緊張したとか
上手くいかなかったとか
そんな会話を交わした後○○ちゃんを探したが…
 
どこにも見えなくて
どうやら帰ってしまったらしく
ザンネンなようなホッとしたような
複雑な想いになったことをボンヤリと覚えている
 
というのも
彼女に後ろめたい気持ちがあって…
 
どうして
こんな大事なイベントを○○ちゃんに教えなかったのか
ほかの女の子たちには知らせていながら…
 
 
 
 
その時はまだハッキリとは感じていなかったけど
その頃から僕と○○ちゃんの間は
どことなく遠く離れていくような
そんな雰囲気がかすかに漂い始めていたのだと…
 
というより
遠く離れつつあったのは僕だけで…
 
僕の方だけ
目に見えないヒビが入り始めて…
 
いたのだろう…
 

エピソード⑤…二股

2019-06-25 22:25:00 | 想い出
 
 
気がつけば
暑かった夏は終わり
いつしか風景は秋の装い
 
僕と○○ちゃんの
日課となっていた朝の図書館でのランデブー
涼しくなってもしばらく続いていたが…
 
クラスが遠く離れていたことから
図書館以外で顔を合わせることは
めったになくなっていた
 
手紙のやり取りも
図書館で顔を合わせていることもあって
徐々に間隔が伸びるように…
 
 
 
一方
遅れて登場した?肉感的?な彼女とは
割と頻繁に顔を合わせていた
 
というのも
隣のクラスだったからだが…
 
 
 
 
僕たちの通っていた高校は
校舎を回る廊下が2階にしかなく
その廊下のある2階は
職員室以外に全学年のロッカーや
体育館への通路につながるなど
学校共通のスペースになっていた
 
そして
各クラスは1階から4階まで貫く
何本かの階段で上り降りすることになるという
非常に変わった構造の校舎だった
 
学年ごとに階数が決まってて
1年生が1階
2年生が3階
3年生が4階
 
そのため1組と2組の教室の
出入り口が向かい合わせになっていて
ほかのクラスへ行くには
一旦2階の廊下まで行かなければならなかった
 
(先生にとってはそれほど不便でもなかった?)
 
ただトイレだけは出入り口のすぐ近くにあり
便利には便利だったけど
たまにタバコの臭いが…
 
(言葉で説明するのは難しい?)
 
要するに
1組と2組或いは3組と4組のような
隣のクラスにならないと
顔を合わせることがなかなかないと
それを言いたかったわけで…
 
 
 
 
だけど
頻繁に顔を合わせていながらも
肉感的な彼女との距離が
すぐさま縮まるということにはならなかった
 
僕にみんなには公然とも言える○○ちゃんがいたように
彼女にも僕とは違う狙っている誰か?
がいたのかもしれないと…
 
当時の僕は感じていた
 
 
二股?
 
 
それはそれで
自分もおんなじようなことをしてるのだから
特に彼女を嫌いになるようなことはなくて…
 
現に
同じ美術部の浅黒いイケメンっぽいヤツが
肉感的な彼女に好意を寄せてるみたいで
彼女もマンザラでもなさそうな感じが
ハタから見ていてもわかった
 
 
で…
大げさに言えば…
 
できれば
彼女がソイツと仲良くなってくれた方がいいと
僕は思ってて…
 
その方が
○○ちゃんに後ろめたい想いをすることもなかったし
肉感的な彼女をエロく感じる自分を
恥ずかしいと思わなくて済んだから…
 
 
だけど結局
肉感的な彼女は
浅黒いイケメンっぽい美術部のヤツより
僕の方が気に入ってたみたいで…
 
途絶えたと思っていた
僕へのアプローチの態度は
それからも繰り返されることに…
 
 
 
なので
僕の二股?は
その後も変わることなく
中途半端に続くことになってしまった
 
(って?ヒトのせいにする?)
 
 
 
二股か…
 
倫理的に許されないよな?
 
 
 
 
 
 
当時からエロジジイの素質
充分すぎるほど…

エピソード④…誘惑

2019-06-22 21:52:00 | 想い出
 
 
夏休みが終わって再びの学校生活
 
夏休み明けで
顔を合わせるクラスメートたちは
すっかり黒く灼けたりして変わったヤツもいれば
まったく変わらないヤツもいて…
 
(何してたんだろ?勉強か?)
 
僕と彼女は初デートの後
相変わらず手紙のやり取りを続けていた
 
が…
 
クラスも別々になって
しょっちゅう顔を合わせることもなくなったので
どうすればいいのか考えた挙句
朝早く登校して図書館で落ち合うことにした
 
図書館で落ち合い
その日の予習などをすることを言い訳に
学習コーナーで隣に座りながら…
 
そんな風にしているカップルたちも
学習コーナーには何組か居て…
 
ただ僕たちは隣に座っても
しょっちゅうお喋りをするわけでもなく
ホントに勉強してる風な感じのまま…
 
文字どおりオクテだったのだろう僕たちは
隣同士で座れるそれだけで幸せだったから…
 
 
やがて
そんな2人の姿が誰かたちの目についたようで
僕たちが付き合っている?ことが
みんなに知られるところとなってしまった
 
でも
別に秘密にしていたわけじゃなく
誰にも打ち明けていなかっただけで…
 
 
 
 
 
 
 
そんな時に
あきらかに僕にアプローチしてくる女の子がいた
夏休み明けでオトナになったみたいな…
 
彼女も1年生の時に同じクラスで
少し背の高い165センチくらい…
 
決して太ってるわけじゃなかったが
大柄な体型だからだろうか?
ポッチャリしてオトナになったように見えた
 
でも
僕と○○ちゃんが付き合ってること
おそらく彼女も知ってるはず
 
なのに…?
 
 
 
 
9月のある日のこと
たまたま早弁をして
お昼時間に学校の購買部でパンを買った時
僕が買ったパンを彼女が素早く取り上げて…
 
このパン!も〜らった!
 
そう言って笑いながら…
 
なんだよ〜
返せよ〜
 
僕も笑いながら
彼女の腕を掴んだとき…
 
全身が痺れるような衝撃が走った!
 
 
柔らかさに!
 
彼女の腕の
驚くほどの柔らかさに!
 
何という柔らかさ
そして弾力のある…
 
 
それまで
女の子の腕に触れたことなんかなかったから
腕どころか手を繋ぐことさえ…
 
(フォークダンスでは手を繋ぐ真似だけで…)
(当時から自意識過剰の…)
 
 
アプローチしてきた彼女は
どちらかといえば古風な感じの
○○ちゃんとは違って
部活も剣道部と美術部という相反する部活に所属し
今風というか現代的な感じの子で…
 
その現代的な感じが…
 
 
そんなことより何よりも!
 
彼女の腕の柔らかさ?に
僕は魅せられてしまった…
 
女の子って
こんなに柔らかいんだ!
 
 
彼女がワザと目論んだわけでもないのに
そういえば顔つきもプリッとした唇など
どことなく肉感的なイメージを感じさせ
痩せた○○ちゃんとはかなり違う…
 
そんな彼女に誘惑された?
 
そう
まるで誘惑されたみたいに
惹きこまれていく僕だった
 
新しいライバルの出現?
 
 
って…
惑わされているのは
紛れもなくこの僕でしかなく…
 
 
純心派の○○ちゃんか
新しい現代風の彼女か…
 
(騙されてる?女体に…)
 
 
 
 

エピソード③…17才の夏

2019-06-19 20:42:00 | 想い出
 
 
やがて訪れた高2の夏休み
 
17才…
 
(そんな歌が流行ってたっけ?)
(とか言うと年齢バレちゃう?)
 
 
いま思えば
その頃が一番楽しい時期だったのだろうか?
受験の心配もまだ本格的ではなく…
 
そうかもしれない
 
そうなのだろう
いまとなっては…
 
 
 
 
2年生になってから
僕は勉強そっちのけで
流行りのフォークギターを弾くようになっていた
自作の歌も作ったりして…
 
髪も長く伸ばしはじめ
そのせいか幾度か女の子に間違えられることも…
 
(こんなに背の高い女の子は滅多にいないはずなのに…)
(知らないオジさんの痴漢にも遭遇してしまうことに…)
 
 
彼女の方は
3年生が受験のため部活を抜けたため
部長になって部員たちをまとめるなど
夏季合宿とかもあったりして
バレーボールに何かと忙しそうで…
 
(強くもない進学校のバレーボール部…)
 
 
そんな中で初めての
僕たちの初デート…
 
初デート…?
と言えるのだろうか?
 
 
 
それは
ただひたすら歩くだけのつまらない?
そして長い1日になることに…
 
いや
つまらないことはなかった!
 
何の目的もなく
ただ一緒に居たいからというだけで
彼女と僕は逢っていた?
としても…
 
(遠い昔の高2だぜ…?!)
(純情すぎて涙が出るよ…)
 
 
そして
僕たちの初デートは
お昼過ぎから夕方まで
ずっと歩きっぱなしの1日になっていた
 
何時間歩いただろう?
何キロ歩いただろう?
 
街中も
海も…
 
歩きながら
汗が止まらなかった
 
暑いだけじゃなく
いろんな意味で…
 
 
 
それでも僕は幸せだった
彼女が僕の隣を歩くだけで…
 
二人が並んで歩く姿
誰が見ても初々しいカップルの影
 
に違いなかった
 
 
でも
彼女と何を話したのか
何を考えて長い間歩いていたのか…
 
時おり話したり
ずっと黙ったり
しながら…
 
 
 
日焼けした浅黒い顔の彼女が被った
リボンのついた麦わら帽子
その下からのぞく
くったくない彼女の笑顔
 
そして
自転車を押しながら
黙って歩く僕の肩にかかる夏の陽射し
 
そんな幸せが
永遠に続くように思われた
 
とある夏の日…
 
 
僕たちの初デートは
そんな風にして終わった
 
駅で見送った彼女の笑顔
手も握れなかったけど…
 
何か
気の利いた何かを
すれば良かったのだろうか?
 
そんなことを思いつつ
彼女の乗った電車を僕は見送っていた
見えなくなってもずっと…
 
見送りながら
自分でもどうしようもない想いに
心を震わせていた
 
夏休みが終わってしまう…
 
 
 
 
そんな
17才の夏…
 
だった
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2学期が始まって
このまま幸せな日々が続くと思っていたとき
思いもかけない不意の嵐が吹き始めることに…
 
すでにこの頃から
僕は多情というか
いまのエロジジイの片鱗が芽生えはじめていたのかも…
 
 
 
だからこそ…
 
彼女の
浅黒く灼けた笑顔と麦わら帽子が…
 
いまとなっては
かけがえのないほど…