新潮文庫 昭和四十年
狂いつつあり、そして、狂ってしまい精神病院
に入れられてしまった母に捧げるバラード。
人が狂っていくのを見るのは辛いだろう。それが、
母となると、これはもう耐えられないほど
辛かろう。
看護人が手製のジュースをやり、それが死に水
となり、亡くなってしまう。いったい、わしは何
を読ませられとるんだろう、ツラいだけやないかい。
いったい、なんの意味があるのだろう。イヤなだけだし
イヤなものを読ませられている、と云う想いのみに
陥ってしまう。それでも、それが文学というもの
すごさなのだ。
彼(安岡氏)は、もっと身を切るような思いを
されたのだ。ぼくらはもっと忘れてしまっている
人間の深みを知らなければならないだろう、と思った。
(読了日 11・20(水)14:29)
(鶴岡 卓哉)
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