むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『初恋』中原みすず(新潮文庫)

2024年11月20日 | 読書
初恋は、いつですか? よくある質問ですが、ちゃんと答えられる人はどれくらいいるでしょう。そのとき、ハッキリとした自覚があったのか無かったのか淡すぎてわからないくらいの色合いだったのかもしれません。
また、青春時代は、いつからいつまでという区切りが明確にあるわけでもなく、過去の体験も意識できず、未来もぼんやりして見えていない現代だけを見ながらなんとなく生きている状態と考えることもできます。
そして、1968年12月10日の府中三億円強奪事件(時効が成立し未解決)も、淡い泡沫となって消えていく現在でした。初恋と同じように。
この小説の作者はプロフィール非公開であり、小説の主人公と作家の名前は同じです。そして、府中三億円事件の実行犯であるらしいのです。あるらしいと言うのは、彼女が事件を起こす意志があったかどうかさだかではないと言っているからです。
この小説を読んで、なるほど、これでは事件が迷宮入りになるわけだと納得できました。この事件からは、三億円を強奪してやろうという意志が感じられないというか、お金に対する執着がまったくありません。
ただ、計画的に実行しただけであり、三億円を強奪できればそれで終りだったのです。
そんなことより、大学受験や、(意識していないにしても)初恋の方が大切でした。
映画化もされたそうですが、主演の女優が作者を言葉を交わしており、彼女が真犯人だと確信したと語っているそうです。


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