原題:『赤線玉の井 ぬけられます』 仏題:『Rue de la Joie(快楽の街)』
監督: 神代辰巳
脚本: 神代辰巳
撮影:姫田真佐久
出演:宮下順子/蟹江敬三/丘奈保美/芹明香/吉野あい/中島葵/絵沢萠子/殿山泰司
1974年/日本
「気質」と「階級」の関係について
主人公は玉の井の「小福屋」で働いている売春婦たちである。シマ子は刺青をしている男が好きでやくざの志波と付き合っているが、博打好きの志波にまともな稼ぎはなく、金を磨ってはシマ子のところに金を無心に来るだけではなく、他に素人の愛人がおりヒロポンの常習者であり、せめてヒロポンだけでも止めさせようとシマ子は体を張る。
直子は一日に26人の客を獲ったという店の最高記録を抜こうと正月早々に必死になって客をとっている。公子は松田という男と結婚して足を洗ったばかりだったが、不幸にも松田はセックスが下手で満足できない公子は「小福屋」に立ち寄ったついでに客をとってしまう。
毎日家の屋根に登って首つり自殺の真似をしているほどに命がけで仕事をしている繁子はラストで「小福屋」を辞めるのであるが、それはより待遇の良い店に引き抜かれていくだけであり、要するに本作では誰も「ぬけられない」のである。それはまるでマトリョーシカ人形のように芯まで気質が抜けないという意味もあるだろうが、「本作は赤線が廃止される前の昭和30年代を舞台としている」というテロップの後に、当時の皇太子と皇太子妃が仲良くテニスをするカットが挟まれ、店が終わる時には「君が代」が流れるように流動性のない日本の「階級」の問題でもあるのである。