多摩爺の「時のつれづれ(卯月の29)」
勇気をだして臆病であれ!(知床観光船の海難事故)
悪化するとの予報がでていた気象環境を、軽く捉えていたのだろうか?
それとも、船舶の整備に問題があったのだろうかか?
はたまた、舵を握った船長の、運転技術に問題があったのだろうか?
ゴールデンウィークをひかえた、世界自然遺産を臨む知床の海で、悲しい事故が起こってしまった。
四季の国に住んでいると、毎年当たり前のように、
目の前で繰り広げられる季節の移ろいに、小さな感動を感じてはいるものの、
なぜか・・・ 自然豊かな景勝地に行って、
大きな深呼吸をしながら、自然の彩りを五感で楽しみたいとの衝動に駆られてしまう。
この国には、どうしても直に見てみたかった景勝地が数々あり、
思いつくだけでもオホーツクの流氷(北海道)、奥入瀬渓流(青森県)、蔵王の樹氷(山形県)、
雪の大谷(富山県)、耶馬溪(大分県)、高千穂峡(宮崎県)、屋久島の縄文杉(鹿児島県)などは、
生きてるうちになんとかして訪れたいと思っている。
流氷、奥入瀬、雪の大谷、耶馬溪、高千穂は、以前に行ったことがあるが、
蔵王と屋久島については、残念ながら・・・ いまだに訪れる機会に恵まれていない。
今回、不幸な事故が起こってしまった知床には、15年前の2月に訪れている。
大手旅行代理店のツアーだったが、網走監獄を遠くから眺めることができる高台のホテルと、
ウトロ漁港に近い、観光ホテルに泊まる二泊三日の旅だった。
厳寒の冬真っ盛りであり、積雪もあって、知床には自然文化センターまでしか行けなかったが、
お目当てが流氷だったので、フレペの滝までの雪上散策を楽しむだけで満足したが、
到着した釧路空港から、阿寒湖を経由して網走に向かう観光バスのなかで、
ガイドさんから突然告げられ、ビックリしたことが、いまでもしっかり記憶にのこっている。
「昨日まであった流氷ですが、風の影響で沖に流されたので、明日の流氷観光は未定です。
今夜のうちに風向きが変わる情報もありますのて、流氷が流れ着けば船はでますので、
申し訳ございませんが・・・ ご了承ください。」
流氷って・・・ 一度着岸したら、春までそこにあるものだと思っていたら、
風向きによって、沖合と陸地を行ったり来たりするというから、
それを知らなかったことは・・・ 驚きを隠せなかったし、ちょっと恥ずかしくもあった。
結局、沖合数キロの所まで流氷がきていて、翌朝の観光船は二便だけ出航したので、
ガリガリの流氷を砕く体験はできなかったものの、海に浮かぶ流氷を見ることだけはできたが、
観光船から下りて・・・ 再び観光バスに戻ると、
ガイドさんから、またもやショッキングなことが告げられるから、驚きの連続である。
「本日の流氷観光船は、これから風が強くなるとの注意報(警報ではない)がでましたので、
午前中の二便をもって、出港はとりやめになりましたので、
みなさんは、ほんとうに・・・ ラッキーでした。」
バスの車内では一斉に喝采があがり、皆が拍手していたが、いまになって振り返ってみると
自然を相手に、安全と向き合うとは・・・ それぐらいシビアなことであって、
一時的ではあるが、人の命を預かる者に「なんとかなる。」といった考え方は禁物で、
気象情報を基にした約束事は絶対であり、その判断を躊躇してはならないということだった。
知床にやってきた観光客からしたら・・・ それこそ、一生に一度行けるかどうかの旅だろう。
少々の揺れなら我慢して、なんとしてでも海から眺める知床の自然を写真に収め、
その目にもしっかり焼き付けて、生涯の思い出としたいと思うのは当然だ。
とはいえ・・・ 自然はときとして、善良な旅人であっても牙を剥くことがある。
そういった捉え方が、観光船の運営事業者の頭のなかにあれば・・・ 起こらない事故だった。
遠いところからやって来てくれた、観光客の気持ちに寄り添う勇気も分らんではないが、
状況を客観視すれば、臆病(慎重)になることにこそ、本当の勇気だったのではなかろうか?
臆病な決断をくだすということは、非難に晒される胆力(覚悟)という、
桁外れの勇気が求められることを・・・ 忘れてはならない。
あくまでも持論だが・・・ 人の命を預かる者にとって怖いものは、
慣れであり、驕りであり、油断であり、無知ではなかろうか?
だからこそ、慎重であってほしいし・・・ 臆病ぐらいがちょうど良い。
常日頃から、なにかしらの課題を、自らの判断と行動に課しながら、
学び続けることから、けっして手を抜かないでほしい。
申し訳ないが、観光客は受身であり、疑うことなんて頭の片隅にもないのだ。
能書きは・・・ これぐらいで止めておこう。
まずは、不幸にも亡くなられてしまった方々のご冥福を、心より祈念させていただきたい。
そのうえで、行方不明となられている方々を、
冷たい海から、一刻も早く見つけ出し、救出してほしいと願ってやまない。
さらには、救出に当たっていただいている関係者の尽力に感謝しつつも、
くれぐれも二次被害とならないよう・・・ 細心注意を払って頑張っていただきたいと祈念する。
追伸
そういえば・・・ 昨日(4月25日)は、
兵庫県の尼崎市で、JR福知山線の脱線事故があった日だと記憶しているが、
関東のテレビ局では、夕方から夜のニュースでは取り上げられたが、
午後のワイドショーで、取り上げた番組はなかったと思う。
ひょっとしたら、放映されていたかもしれないが、
気がつかなかったぐらいだから、扱いは軽かったと言わざる得ない。
当時としては、考えられないような残念極まりない人為的ミスだったと記憶しているが、
今回の海難事故があって、それどころじゃないのも分るが、
17年の時を経て、過去の出来事にされてしまったことには・・・ いささか辛いものがある。
人々の冷静な判断と、的確な行動さえあれば、
避けることが可能であったと思われるような、不幸な事故については、
一つの戒めとして・・・ 絶対に風化させてはいけないと思うが、いかがなものだろうか?
お書きになっている通りですね。
さすがに関西ローカルでは17年前のJR福知山線脱線事故のニュースは結構、やってました。あの僕の家の近くで起きた大事故は、昨日のことのように覚えております。真っ先に取材に駆けつけましたし。
福知山線の脱線事故は、語り継がれなきゃならない、とっても辛い事故ですが、
私にとっては、対応していた鉄道会社の幹部は幼なじみで、
責任を問われる幹部ではありませんでしたが、彼の姿がテレビ画面にチラチラ映るのもまた、別の意味で辛いものがありました。
「勇気を出して臆病になれ」
本当ですね。
タイトルでなんのこと?と思わずブログを読みました。
でも本当に、臆病になること(万が一を考えて中止を言い出すこと)はとても勇気が要ることです。
(ちなみに今これを書いていて、日本の国防意識のなさも思い浮かびました…😅)
私もいろいろ放っていることとかあり…
勇気をもって臆病にならないと、と思わされました。
良い記事をありがとうございました🌸
私思うんですが、臆病って慎重ってことですから、けっして後ろ向きじゃないと思うんですよ。
捉え方一つで、視点が変わりますから、そこらあたりに屯する年寄りですが、頑張らなきゃと思います。
コメントを頂戴しありがとうございました。
実は、私も知床の遊覧船には乗ったことがあり、子供たちと綺麗な自然を楽しみました。誰もが、まさかこのような事態になるなんて、想像もしていません。思えば、厳しい北海道の自然に、充分な注意を払わなければいけないのでしょう。今回の会社の責任は大変思いと感じます。
あとは、行きたいところでいえば、富士山に登ってみたかったのですが、協力してくれそうな方がいないので、実現しそうにありません。屋久島には行ったことがあります。縄文杉まで、朝に出て、昼頃に着きましたが、感動しました。外国は当分難しいですね。
会社の責任は重大だと思いますが、こういう経営者って会社を倒産させて、ない袖は振れないと言って開き直り、
家族に影響が行かないように、預貯金などの資産を移動させて偽装離婚するのがオチでしょう。
土地建物の名義変更は、さすがに間に合わないと思いますが、26名の賠償責任には全くもって足らないと思います。
悔しいが刑事罰を受けてもらって、刑務所に入ってもらうぐらいしかできないのでしょう。
ホントにホントに・・・ 悔しいですね。
北海道の事故。
書かれていらっしゃるように、
私も昨日、9時18分
福知山線列車事故の時黙祷しましたが、
あまりにメディアがとりあげない。
自然災害はどうしようもありません。
ですが、人災は同じことを再び起こさない為
大切なのにと思います。
どんな亡くなり方をしても、
遺族は自分を責めるものです。
全てのこと、風化させてはいけないですね。
仰るとおりです。
人間は時が経ったり、他人事であったりすると、申し訳ないが忘れてしまいます。
だからこそ、メディアにその役割を担ってもらわなきゃならないのに、
地域によって、報道姿勢に濃淡があるのはいただけません。
人災に関する戒めだけは、全国のメディアを挙げて風化させない取り組みをすべきだと思っています。