仕事の合間を縫って、最終日ぎりぎりで「鴨居玲展」を見ることができました。
◆「出を待つ(道化師)」
◆ステーションギャラリーは丸の内北口からすぐ
久しぶりにずっしりと重くて濃い作品を見たなあ、というのが全体の感想。それは繰り返し描かれた自画像、老人、酔っ払い、負傷兵といった「人」であり、暗いけれど深い色味のある「黒」でもあり、皺の刻まれた「顔」や「手」でもあります。
◆「静止した刻」
◆「酔って候」
◆「おっかさん」
◆「廃兵」
しかし暗い画面の中にも、髪の毛や小物にはっとするような明るい色が使われており、また時には同じ作者かと思うような不思議な鮮やかな色調の建物が描かれたりもします。
◆「教会」
※ちなみに巨大な石が宙に浮かぶ、マグリットの「ピレネーの城」とよく似た作品がありました。
これらの油彩画の他に30点ほど展示されていた素描。これが素晴らしい!
◆「蛾」(紙にコンテ) この線!
◆「蛾」(こちらは油彩)
◆「踊り候へ」(紙にパステル)
う~ん、やっぱり「デッサン力」だよな~、と一人納得。音楽でも美術でも、思いを伝えるための技術がなければ何にもできないのです。
さて、展示も終わりに差し掛かったころに出くわすのがこの作品。
◆「1982年 私」
何というこの重さ。
意識したであろうと言われるクールベの「画家のアトリエ」と比べると「幸福」と「絶望」?
◆クールベ「画家のアトリエ」
冒頭の「出を待つ(道化師)」の強烈な「赤」は強い意志と希望を見つけたかのようにも思えるのですが、鴨居玲はその翌年に亡くなります。アトリエの遺品が最後に展示されていました。
◆遺品と遺作の自画像(未完)
鴨居玲はひとつひとつの作品を一気に描き上げたそうですが、そのたびに自分自身を削っていったんだな、とこれらの遺品をしばし見いってしまいました。(多くの人たちがここで立ち止まっていました)
※展示されていたパレットは笠間日動美術館のパレット館で見ることができます。
(2015.07.20)