『マリー・アントワネット』(06)(2006.9.28.ヤマハホール)
ソフィア・コッポラ監督作を試写。この違和感は一体何なのだろうと、ずっと思いながら見るはめになった。それは、フランスの話なのにセリフが全て英語だということや、バックに今の音楽が流されることから生じるものではない。何かむずむずするというか、居心地が悪いというか、出てくる人物の誰一人にも感情移入ができないのだ。
そもそもマリー役のキルスティン・ダンスト自体がかわいいのか醜悪なのかよく分からない描き方なのに加えて、ジェイソン・シュワルツマンとリップ・トーンのルイ親子、侍女のジュディ・デイビス、母親のマリアンヌ・フェイスフル(『あの胸にもういちど』(68)も今は昔か)…と、出てくるみんなが妖怪のような醜悪さを漂わせる。もっともソフィアは、わざとそう描いているのかもしれないのだが…。
で、ふと思い当たったのが「これは日本の少女漫画の感覚に近いのかもしれない」ということ。男には理解し難い女性特有の美意識や恋愛感が散りばめられた、その昔の『ベルサイユのばら』などに感じた違和感とどこか似ているのだ。
マリーが好きだったというピンクを基調にした色使いや、本物のベルサイユ宮殿を使ったロケなど、ビジュアル的には面白いと思いつつも、ちょっと勘弁という感じがどうしても消えなかった。
ビッグイシュー日本版 第63号