田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「ロッド・サーリングの世界」

2024-07-14 13:02:13 | テレビ

「ロッド・サーリングの世界/ROD SERLING SUBMITTED FOR YOUR APPROVAL」(95)
 監督スーザン・レイシー、ナレーション:リー・グラント。スーパーチャンネルで放送されたもの。

 

 「ヘビー級選手への鎮魂歌/プレイハウス90/Requiem For A Heavyweight」(56)など生放送ドラマの50年代。番組ホストも務めた「トワイライトゾーン=ミステリーゾーン」(59~64)と映画脚本(『五月の七日間』(64)『クイーン・メリー号襲撃』(66)「夜空の大空港」(66・TVM)『猿の惑星』(68))の60年代。『四次元への招待』(70)のホストは望んだものではなく、『ザ・マン/大統領の椅子』(72)以外は不遇の晩年といったように、サーリングの足跡を分かりやすくまとめていた。


 ところで、スティーブン・スピルバーグ、ジョン・ランディス、ジョー・ダンテ、ジョージ・ミラーが監督したオムニバス映画『トワイライトゾーン/超次元の体験』(83)の日本公開に際し、ちょっとしたサーリング関連の出版ブームがあったことを思い出した。

『ミステリーゾーン』(83・文春文庫)
『トワイライトゾーン』 (角川文庫・ロバート・ブロック)
『真夜中の太陽』(83・山口書店)
『トワイライトゾーン オリジナル版 超次元の漂流者』(84・サラ・ブックス)
『月刊スターログ1984年2月号』「ミステリー・ゾーン読本(池田憲章」 
『ミステリーゾーン2』(86・文春文庫)
『トワイライト・ゾーン』 (88・河出サウンド文庫)
『ミステリーゾーン3』(89・文春文庫)
『ミステリーゾーン4』(94・文春文庫)

 

 

 

 80年代中盤には、NTVの「ナイトスクリーン」枠で「ミステリーゾーン」の第4シーズンが再放送され、90年には20世紀フォックス ホーム エンターテイメントからレンタル&セルビデオも出された。サーリングのファンにとっては、これらはとてもうれしい流れだった。


『トワイライトゾーン/超次元の体験』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/247bc6d654d5d777a442e45374de8763

『五月の七日間』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/fea0a93429245b99aa56cd632c0dab34

『猿の惑星』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/24026a23be3b2875458ed85a8c30f143


ロッド・サーリングの影響を受けた映画『Re:LIFE~リライフ~』(14)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/db442ff842e94604c29ff2ede7245bd1

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「広重ぶるう」

2024-07-08 16:08:44 | テレビ

「広重ぶるう」(NHKプラス)

 文政13(1830)年。歌川(安藤)広重(阿部サダヲ)は、家業の火消しで生計を立てながら絵師をしている下級武士だった。派手な美人画や役者絵の全盛期であるにもかかわらず、広重の地味な画風は売れず、もがいていた。妻の加代(優香)だけは、広重を気丈に励ましながら、質屋に通い、身を削って夫を支えていた。

 ある日、広重はベロ藍という舶来絵具で描かれた絵の美しさに衝撃を受ける。やがて版元となる竹内孫八(髙嶋政伸)と出会い、「ベロ藍=広重ブルー」を駆使した「東海道五十三次」を描き上げる。

 これまで語られることが少なかった広重を、共に歩んだ妻との夫婦の物語としてドラマ化。原作・梶よう子、脚本・吉澤智子。今は全くはやらない“夫に尽くし励ます女房”の美しさを、女性が描いているのが興味深い。昔のことを、全てが時代遅れと否定するのではなく、こうした形の生き方があったことを知らせるのもドラマの役割。絵師(クリエーター)としての広重の苦悩もよく描かれていた。

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「島根マルチバース伝」

2024-06-28 23:39:22 | テレビ

「島根マルチバース伝」(NHKプラス)

 28歳のひかり(桜庭ななみ)は、高校演劇で神童と呼ばれ、女優になることを夢見ていたが、今は地元のスーパーでアルバイトをしながら、「自分が輝けないのは島根にいるせいだ!」と家族や友人に愚痴りながら過ごしていた。

 ある日、怪しいマスター(佐野史郎)の店に入ると、「あなたが輝くはずだった人生を見てみますか?」と言われる。そして別のバース(異なる選択をした人生)を生きる自分を目撃するが、そのどれもが理想とは程遠い姿ばかり。そんな時、妹から地元の市民劇に誘われて…。

 NHK松江放送局が制作した、島根発の地域ドラマ。稚拙なところもあるが、面白いドラマだった。

 島根から一度も出たことがないことを嘆くひかりが、マルチバースを体験することで変わっていく姿は、自分の住む街から一度も出たことがない主人公のジョージ(ジェームズ・スチュワート)が、二級天使(ヘンリー・トラバース)によって、自分が生まれなかった世界を見せられることで大切なことに気付くという、フランク・キャプラ監督の『素晴らしき哉、人生!』(46)と重なる。

 ここでは佐野が演じた怪しいマスターが天使の役割を果たすわけだ。脚本の竹田モモコは、多分この映画を意識したと思われる。

 また、劇中でひかりが口ずさむ、アニメ「はじめ人間ギャートルズ」のエンディング曲「やつらの足音のバラード」の作詞は島根県松江市出身の園山俊二(作曲はかまやつひろし)。この選曲もなかなかいい。そして時々『アルフィー』66・バート・バカラック)みたいな音楽も流れてきた。


Alfie
https://www.youtube.com/watch?v=_907Odc57-A

やつらの足音のバラード
https://www.youtube.com/watch?v=d1EUwrd0Mmg

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増山江威子さんは不思議な声優だった

2024-06-05 13:23:10 | テレビ

 増山江威子さんは不思議な声優だった。何しろ、「キューティーハニー」のハニーや「ルパン三世」の峰不二子をセクシーに演じたかと思えば、「天才バカボン」のママや「一休さん」の母上さまなど、いわゆる“いいお母さん”もきちんと演じたのだから。

 その意味では、「巨人の星」で星飛雄馬を惑わす歌手の橘ルミとけなげな左門豊作の妹ちよの両方を演じているのが象徴的だ。

 洋画の吹き替えではアン・フランシスとリー・レミックが多かった。こちらはどちらかと言えばセクシー路線の方かな。

 初期の吹き替えは、演劇では食えない新劇出身の人たちがアルバイト的にやっていたケースが多かった。その後、声の仕事が定着し、“声優”が専門職のようになったが、本来彼らは“俳優”なのだから、ちゃんと演技ができたのだ。もちろん増山さんもその一人だ。

歌手としては
「さるとびエッちゃん」の主題歌(作詞・山元護久、作曲・宇野誠一郎)
https://www.youtube.com/watch?v=YVNmCr7K2sI

「アンデルセン物語」の「キャンティのうた」(作詞・井上ひさし、作曲・宇野誠一郎)
https://www.youtube.com/watch?v=iHMhKO6RBms

どちらも宇野誠一郎による名曲だ。


 

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知恵泉「早川雪洲」(NHK)

2024-04-18 12:20:38 | テレビ

 20世紀初頭、映画の都・ハリウッドで頂点へ上り詰めた日本人俳優・早川雪洲。千葉の漁村に生まれた男がなぜ米国へ? きっかけは大きな挫折と運命的な事件。当時、日本人への差別意識が高まる中、なぜ雪洲は2年足らずでトップスターになれたのか? そこには自分の価値を高める巧みな戦略があった。雪洲が成功を手にするまでの前半生の知恵に迫る。

 実は、雪洲の故郷である千葉県朝夷郡千田村(現・南房総市千倉町千田)は、亡母が生まれ育った白間津の隣村。それ故、雪洲にまつわる伝説の幾つかは、母から聞いていたので親しみがあった。

 後年、雪洲のことを調べた際には、『聖林の王 早川雪洲』(野上英之)と『早川雪洲-房総が生んだ国際俳優』(大場俊雄)がとてもためになった。一時、大島渚監督が坂本龍一を雪洲役にして伝記映画を撮る企画があったが、残念ながら流れている。



『戦場にかける橋』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5484fc1869b984aefe90773abcb55129

『底抜け慰問屋行ったり来たり』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/430dd7c84afcfa4a45871fbd31629e46

 

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「戦後史実録シリーズ 空白の900分-国鉄総裁怪死事件-」

2024-03-24 01:02:31 | テレビ

「戦後史実録シリーズ 空白の900分-国鉄総裁怪死事件-」(1980.10.11~18.NHK土曜ドラマ)

 戦後史の謎の一つとされる下山事件を、複数の視点から前後編で描いた異色作。脚本は岩間芳樹。

 初代国鉄総裁となったものの、GHQから国鉄職員10万人の首切りを迫られた下山定則(小林桂樹)の苦悩、謎の死、捜査陣(佐野浅夫ほか)や新聞記者(寺田農、三上真一郎ら)による推理、下山をひいた機関士(伊東四朗)や娘(竹田かほり)の悲劇などを巧みに描き込み、演技陣の好演もあって、骨太のドラマとして仕上がっている。

 戦後の混乱期に起きた謎の事件を、なぜ今またドラマ化したのかは分からないが、いずれにせよミステリーとしても、人間ドラマとしても見応えのあるものになっていた。

【今の一言】同時期に『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』(81)という映画も製作された。

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「音で怪獣を描いた男 ゴジラVS伊福部昭」

2024-03-12 10:26:57 | テレビ

 “原爆の父”を描いた『オッペンハイマー』と、原水爆実験が生んだ『ゴジラ』が同じ土俵に立ち、ともに賞を受けたことに感慨を覚える。

 「祝『ゴジラ-1.0』アカデミー特殊効果賞受賞」というわけでもないが、「音で怪獣を描いた男 ゴジラVS伊福部昭」という、2014年にNHKが製作した番組を見た。『ゴジラ-1.0』でも伊福部の音楽が流れた。

 伊福部は、いわずもがなの、第一作の『ゴジラ』(54)から、数々のゴジラ映画で音楽を担当した作曲家。番組では、なぜ伊福部の音楽は愛され続けるのか?をテーマに、佐野史郎をナビゲーターとして、60年生き続けるゴジラ音楽がいかにして生まれたのか、その誕生秘話から完成までのプロセスを担当者の証言と再現ドラマを交えて振り返っていた。

 アイヌ文化や神楽の影響、ゴジラの鳴き声はコントラバスなど、知っている事柄もあったが、伊福部のゴジラへの思いなど、新たに知らされたこともあり、興味深く見た。

「クラシック音楽館」伊福部昭
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a663a36b4f1fd16b550904e653c65fa4


 ところで、『ゴジラ-1.0』はVFXが主でゴジラは着ぐるみではないが、その動きなどは着ぐるみ時代のものを踏襲しているようにも見える。そこがアメリカ版とは違うところ。特撮技術も含めて、過去の積み重ねの先に『ゴジラ-1.0』があるのだ。

 だから、今回の受賞を見ながら、こういう人たちの功績も忘れてはならないと思った。ゴジラのスーツアクター、中島春雄、薩摩剣八郎、喜多川務。History's Greatest Monsters - Three Generations of Godzilla Actors
https://www.youtube.com/watch?v=I4l44bG0IAw

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「英雄たちの選択」キネマの夢を追いかけて~日本映画の父 牧野省三~

2024-03-11 09:18:49 | テレビ

 日本で映画作りが始まったのは明治14年。京都で歌舞伎の劇場を運営していた牧野省三は、横田商会の横田永之助から映画製作を依頼され、日本最初の映画監督となる。

 チャンバラの撮影を始めたが失敗の連続。試行錯誤の末、時代劇映画を大衆の娯楽へと成長させた。そんな中、映像に音声が付いたトーキーが登場。無声映画を支えてきた俳優や活動弁士、楽士たちは仕事が奪われると猛反対。牧野に映画の未来がかかる「選択」が迫られた、というなかなか興味深い内容だった。

 「日本映画の父」とも呼ばれる牧野が唱えた映画作りの基本「1.スジ(シナリオ)、2.ヌケ(撮影技術)、3.ドウサ(演技)」は今でも通じる言葉。

 彼の監督作はほとんど残っていないので見たことはないが、彼が製作総指揮をした『雄呂血』(25・主演・阪東妻三郎、監督・二川文太郎、脚本・寿々喜多呂九平)を中学生の頃テレビ(1975.7.6.NTV)で見て衝撃を受けた記憶がある。弁士は松田春翠だった。

 『雄呂血』は、善意の行動が誤解を受けて藩を追われた若侍・久利富平三郎(阪妻)が、やがて無頼漢と呼ばれ、悲劇の道をたどる物語。最後に追い詰められた平三郎が捕り方を相手に大立ち回りを演じるシーンがすごい。最近、4Kデジタル修復が実現し、上映時間が従来の75分から101分に伸びたという。

 そして、この番組にコメンテーターとして出演していた周防正行監督の『カツベン!』(19)では、山本耕史が牧野省三を演じていた。また、同じくコメンテーターだったスウェーデン出身の日本映画研究者だというヨハン・ノルドストロムという人にも興味を持った。


【インタビュー】『カツベン!』周防正行監督、成田凌
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3e05619830e2646254dc35f638aab180

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「ブギウギ」笠置シヅ子とエノケン

2024-01-15 09:01:59 | テレビ

 朝ドラの「ブギウギ」に、生瀬勝久演じる喜劇王の“タナケン”こと棚橋健二が登場した。タナケンは言わずもがなのエノケン(榎本健一)がモデル。生瀬とエノケンはちょっとイメージが違う気がするが、今後どんなふうにスズ子(趣里)と絡むのだろう。実際の笠置シヅ子とエノケンは数多くの舞台や映画で共演している。

「ラッパと娘」『舞台は廻る』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/77f0efbdac231901f36f91122f6f3b9d

「ブギウギ」笠置シヅ子の出演映画
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d03f3d1b24e3c1847ba6cda1a2ec786e

『エノケンのびっくりしゃっくり時代』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/107b9b5bbea3eff685701d2e8393980b

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渥美清の「泣いてたまるか」

2024-01-10 09:26:15 | テレビ

 『拝啓天皇陛下様』(63)での渥美清と左幸子の共演の思い出から思い出したドラマがあった。渥美が毎回違う役を演じた1話完結のドラマシリーズ「泣いてたまるか」(67~68)である。「空が泣いたら雨になる~」と渥美が歌う主題歌(作詞:良池まもる、作曲:木下忠司)も懐かしい。

木下忠司
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a99c1910fdaabe5c7083e90d30a02698


 調べてみると、2人が共演した回は何本かあったが、見たことがあったのは、第67回の「雪の降る街に」(監督・井上博、脚本・灘千造)だった。

 刑事の時実一平(渥美)とその妻(左)は、生活に行き詰った犯罪者の妻たちの赤ん坊を引き取り、実子として育ててきた。子どもたち(渡辺篤史、菊容子ほか)は無事に成長したが、一平は死亡した強盗犯の妻(夏圭子)のおなかの中の子どものことが気になって仕方がない。という結構ハードな設定で、いろいろと問題提起をしながらも、最後は“クリスマスの奇跡話”で終わる心地よさがあった。ここでも左の笑顔に救われる思いがした。


 とても良かったので、何本か見直してみた。 

 第28回「ある結婚」(監督・今井正、脚本・光畑碩郎)

  母親(浦辺粂子)と二人暮らしの靴職人の矢島真吉(渥美)は、見合いをしても振られてばかり。ある日、友人(小沢昭一)の結婚式で孤独な独身OL(久我美子)と知り合う。2人は互いに引かれ合うが…。という、アーネスト・ボーグナインが主演した『マーティ』(55)を思い起こさせるような内容。


 第76回「おゝ怪獣日本一」(監督・佐伯孚治、脚本・稲垣俊)。

 日本一の怪獣役者の田中豊作(渥美)は、妻に先立たれ、男で一つで娘(田中美恵子)を育ててきた。だが、娘が初潮を迎え、担任教師(片山真由美)の助言もあり、母親の必要性を感じた豊作は、行きつけの小料理屋の女将(河内桃子)との再婚を考えるが…。このシリーズは、毎回違う役をやる渥美の芸達者ぶりが堪能できるが、それに加えて、渥美の相手役を務める女優たちが素晴らしい。蛇足だが、豊作は「ウルトラマン」のキーラの着ぐるみに入っている。


 第61回「日本で一番もてない男」(監督・高橋繁男、脚本・橋田壽賀子)



https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/fd48040596c8f8369e87aacd6bab7ccf
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a45a8b38878602d6858fab48483df918


 「泣いてたまるか」は、坂上二郎主演で映画化(71)され、ドラマシリーズとしては西田敏行主演でリブート(86~87)された。

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