“迷作”と出会ってしまった時は…
フラニー(アン・ハサウェイ)は、交通事故で昏睡状態に陥ったミュージシャン志望の弟の足跡をたどる中、弟が憧れていたミュージシャンのジェームズ(ジョニー・フリン)と出会う。
ニューヨークを舞台に、音楽を介して出会った男女の物語を描き、しかも旬の女優が主演した小品という点では、キーラ・ナイトレイの『はじまりのうた』にも通じるものがあるが、出来の方は大違い。フラニーの心境の変化、ジェームズとの関係の描き方が中途半端でよく分からないし、肝心の音楽の魅力も薄い。
こうした“迷作”と出会ってしまった時は、「どんな映画でも必ず何か一つは見どころがあります。それはストーリーとは直接関係ないシーンかもしれない、または脇役、小道具、なんでもいいんです。とにかく自分で何かを見付けることが大切なんです」という、淀川長治先生の助言を思い出すことにしている。
今回は、フラニーの母親役のメアリー・スティーンバージェンの存在と、フラニーが“心の歌”としてアメリカの「アイ・ニード・ユー」を歌うところを見どころとした。