田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『江戸っ子繁昌記』

2015-04-13 20:33:50 | 映画いろいろ

フィルムセンターで開催中の日本映画史横断6 東映時代劇の世界Part2

『江戸っ子繁昌記』(61)



 中村錦之助が酒好きで気のいい魚屋勝五郎と旗本・青山播磨という対照的な一人二役を演じる人情時代劇。これは、やはり錦之助が二役を演じた『一心太助』シリーズの魚屋太助と将軍徳川家光、『森の石松鬼より恐い』(60)の現代の演出家と森の石松と同様のスタイルだ。

 あるいはこれらの発展型として、一人七役の『武士道残酷物語』(63)、一人三役の『冷飯とおさんとちゃん』(65)もある。今さらながら錦之助の芸達者ぶりがしのばれる。

 そんな本作の監督は、『森の石松鬼より恐い』のオリジナル『続清水港(清水港代参夢道中)』(40)を撮ったマキノ雅弘だ。また本作は、落語の「芝浜」と長屋物、怪談の「番町皿屋敷」、歌舞伎の「魚屋宗五郎」、旗本と町奴が対立する水野十郎左衛門の話などを下敷きとしながら、これらを合体させ、一つの物語として仕立て上げている。脚本成沢昌茂の力技に舌を巻く。

 勝五郎の女房に長谷川裕見子、長屋の隣人に千秋実、桂小金治、金貸し婆に高橋とよ、大家に坂本武と、脇も名優ぞろい。長屋物の魅力満載の一編だ。

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『鞍馬天狗』

2015-04-13 20:26:09 | 映画いろいろ

フィルムセンターで開催中の日本映画史横断6 東映時代劇の世界Part2

『鞍馬天狗』(59)



 原作大佛次郎、監督マキノ雅弘 脚色結束信二。東千代之介主演のシリーズ最終作。鞍馬天狗史上初のカラー作品とのこと。千代之介の倉田典膳=鞍馬天狗からはいささか線が細い印象を受けるし、本作では見どころの一つである杉作少年との絡みも薄い。

 対照的に天狗の恋人の芸妓を演じた美空ひばりの存在感がすごい。歌はもちろん、見事な京都弁と何気ないしぐさや表情が相まってとても色っぽい。当時21歳とはまさにアンビリーバブル! この映画の主演は実はひばりだったと言っても過言ではないほどだ。

 ひばりは嵐寛寿郎の鞍馬天狗では杉作を演じているが、本作には、丘さとみらの角兵衛獅子が、ひばりのヒット曲「越後獅子の歌」を歌うシーンがある。これは一種のパロディーだったのだろうか。

 天狗の敵役となる新選組の近藤勇に月形龍之介、土方歳三に沢村國太郎、沖田総司に原健策。そして天狗の相棒の黒姫の吉兵衛に千秋実。

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『殿さま弥次喜多 捕物道中』

2015-04-13 20:16:18 | 映画いろいろ

フィルムセンターで開催中の日本映画史横断6 東映時代劇の世界Part2

『殿さま弥次喜多 捕物道中』(59)



 監督・脚本沢島忠、脚本笠原和夫による『殿さま弥次喜多 怪談道中』の続編。尾張と紀州の若殿(中村錦之助と賀津雄兄弟)が町人“弥次喜多”に身をやつし、さまざまな騒動に巻き込まれながら道中を行く。理屈抜きに楽しいミュージカル仕立てのコメディー。何でもありのごった煮時代劇の魅力爆発。

 橋本治の『完本チャンバラ時代劇講座』に書かれていたように、登場人物をやたらと走らせることでスピード感を生んでいる。船上でのアクションの後に、船が壊れていかだになり、二人の殿さまだけが残るというラストシーンは、ジョン・フォードの『周遊する蒸気船』(35)からのいただきかとも思ったが、こちらの日本初公開は96年だからそれは無理なこと。しからば乗っているSLを壊して燃料とする、50年日本公開の『マルクスの二挺拳銃』(40)あたりが大もとか。

 錦之助と賀津雄はもちろん、家老役の杉狂児と渡辺篤、田舎侍の山形勲、ドジな岡っ引きの薄田研二らが楽しく盛り上げる。悪の親方に月形龍之介。桜町弘子、中原ひとみ、丘さとみらが花を添え、ダークダックスの歌声も効いている。

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