田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

グレン・フライが…

2016-01-21 09:36:54 | 映画いろいろ

 元イーグルスのグレン・フライが亡くなった。まだ67歳…。ほぼリアルタイムで聴いてきた人だけにショックは大きい。イーグルス時代はドン・ヘンリーのリードボーカル曲群の陰に隠れがちだったが、各アルバムに必ず1曲はグレンの光る曲が入っていた。



『イーグルス・ファースト=Eagles』(72)
 「テイク・イット・イージー=Take It Easy」ジャクソン・ブラウンとの共作。ブラウンの『フォー・エヴリマン』にも入っている曲だが、こちらはカントリー調で、バーニー・リードンが奏でるバンジョーがいい味を出している。イーグルスは最初はカントリー色が強いバンドというイメージだった。

『ならず者=Desperado』(73)
 西部開拓時代のならず者をテーマにしたコンセプト・アルバムでは「テキーラ・サンライズ=Tequila Sunrise」

『オン・ザ・ボーダー=On The Border(74)
 「過ぎた事=Already Gone」

『呪われた夜=One Of These Nights(75)
 「いつわりの瞳=Lyin' Eyes」コーラスが美しい名曲。

『ホテル・カリフォルニア=Hotel California』(76)
 「ニュー・キッド・イン・タウン=New Kid In Town」
“新参者”ということで、引っ越してからしばらくこの曲を留守電のBGMに入れていたことも。グレンの曲ではこれが一番好き。

『ロング・ラン=The Long Run』(79)
 
「ハートエイク・トゥナイト=Heartache Tonight」ロックンロール調だが、詩は当時のグレンやドンの心境を反映したような曲。偶然ドジャースタジアムで耳にして、あらためていい曲だなあと思った覚えがある。



 イーグルス解散後、ソロとなって最も精彩を放ったのはグレンだった。時節柄デビッド・サンボーンらのサックスをフィーチャーした曲が多い。

『ノー・ファン・アラウド=No Fun Aloud』(82)
軽快な「サムバディ=I Found Somebody」とメロウな「恋人=The One You Love」

『オールナイター=The Allnighter』(84)
 「セクシー・ガール=Sexy Girl」「ヒート・イズ・オン=The Heat Is On」『ビバリーヒルズ・コップ』
のテーマ曲としても有名に。

「ユー・ビロング・トゥ・ザ・シティ=You Belong To The City」(85)
 TVシリーズ『マイアミ・バイス』の挿入歌。グレンは俳優として出演もしたが演技の方は…。

『ソウル・サーチン=Soul Searchin'』(88)
 
「トゥルー・ラブ=True Love」「ソウル・サーチン=Soul Searchin'」
ロックンロールからバラードまでを網羅したグレンの最高傑作アルバム。

「パート・オブ・ミー パート・オブ・ユー=Part Of Me, Part Of You」(91)
 (『テルマ&ルイーズ』の挿入歌)

『ストレンジ・ウェザー=Strange Weather』(92)

 今となってはイーグルスのライブを見られたことが貴重な体験に。1995年11月の「Hell Freezes Over Tour」は友人たちと横浜アリーナと東京ドームで。中にはすでに亡くなった友も…。確かこの時もグレンの体調が心配されていた覚えがある。

 2004年10月31日の「Farewell I Tour」は妻と共に東京ドームで。グレンが「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット=Take It to the Limit」を歌う前に、「僕のカードの残高はリミットいっぱい。これはランディ・マイズナーと作った曲だよ」と語っていたが、グレンと大ゲンカをしてランディがイーグルスを去ったことを思うと何だか複雑な気がした。今度はランディも呼んであげなよ、なんて思ったものだが、もはやそれも叶わぬことになってしまった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ひまわり』

2016-01-21 08:42:40 | All About おすすめ映画

『ひまわり』(70)(1975.11.8.名画座ミラノ)

喜劇から悲劇への変転が見事

 この映画は、イタリア、ナポリを舞台に、第二次世界大戦によって引き裂かれた一組の夫婦の悲劇を描いています。ビットリオ・デ・シーカ監督、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニという名トリオは、この映画の前に『昨日・今日・明日』(63)『あゝ結婚』(64)という艶笑コメディの傑作を生み出しました。

 この映画も、前半はマストロヤンニとローレンが演じるアントニオとジョバンナ夫妻のやり取りが明るくコミカルに展開され、お得意のパターンかと思わせます。ところが、アントニオがロシア戦線に出征し、行方不明となる中盤は一転して悲劇となります。この喜劇から悲劇への変転が悲しみを倍加させます。

 デ・シーカ監督は『靴みがき』(46)『自転車泥棒』(48)などでイタリアンネオリアリズムの先駆者として知られますが、その一方、コメディ映画も数多く手掛けた人。だからこそこうした芸当ができるのです。

 ジョバンナは夫を捜しにロシア(現ウクライナ)に赴きますが、行き倒れて、一時記憶喪失となったアントニオは、命を救ってくれたマーシャ(リュドミラ・サベリエーワ)と一緒に暮らし、子まで生した仲になっていました。このマーシャがとてもいい人なんです。だからこそ夫を返してくれとは言えないジョバンナ。3人の関係を見ているとなんとも切なくなります。

 絶望したジョバンナはアントニオの目の前で列車に飛び乗り、去っていきます。その時、ヘンリー・マンシーニ作曲のテーマ曲がまさに絶妙のタイミングで流れはじめて…。ずるいと思いながらも涙せずにはいられない名シーンです。そして、アントニオはジョバンナに会うためにイタリアに帰国するのですが…。

 ローレンがイタリア女性の情の深さとたくましさを体現して見事です。彼らは誰も悪くない。悪いのは彼らの人生を狂わせた戦争なのだということを強烈に感じさせる恋愛メロドラマの傑作です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする