現実感の薄いマネーゲーム
2000年代半ばのアメリカを襲ったリーマンショック以前に経済破綻を予見した男たち。彼らはウォール街の常識を疑い、一世一代の勝負に出たアウトローだった…。
実話を基に、金融業界の裏側や人間模様をユーモアを交えながら描く。演じるは、クリスチャン・ベール、ライアン・ゴズリング、スティーブ・カレル、ブラッド・ピット…とくせ者揃い。同じく金融業界の裏側を描いた『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)のような面白さを期待したが、期待外れだった。
アダム・マッケイ監督は「銀行家たちはわざと複雑に聞こえるように難解な言葉を並べ立てる。この業界独特の難解な用語を聞いたら、観客は自分がバカだと感じて飽きてしまうだろう」と語っている。そこで、著名人による“解説”を挿入しているのだが、それを聞いても分かったような分からないような感じで、あまり効果はない。
そもそも空売りとは? CDOとは? CDSとは?… 矢継ぎ早に繰り出される専門用語を使って金融業界の実態を知らされても、金融や株についての知識がない者にとっては煙に巻かれた気分になるだけなのだ。この映画の致命的な失敗は、監督自身が気づいた問題を最後まで解決できなかったことにある。
さらに、例えば、同時期に製作された『ドリームホーム 99%を操る男たち』(14)は、経済破綻の際に、人々が生活する現場(地上)では何が起きていたのかを描き、見ていて身に詰まされたりもしたのだが、こちらはあくまで机上(天空)の出来事に過ぎないように見え、現実感の薄いマネーゲームとして映る。登場人物の誰にも感情移入できないから、彼らが裏をかいて巨万の富をもうけても、見る側は何のカタルシスも感じない。
と言う訳で、同じく実話を基にしたベール主演の『アメリカン・ハッスル』(13)のようなコンゲーム的な面白さを期待すると肩透かしを食らう。